やわく、制服で隠して。
一日中、スマホの電源は切っていた。
切ったって言うよりも、昨日の夜から充電していなくて、バッテリー切れで電源が落ちたまま、充電もせずに放置していた。

深春に話したいこと、話さなきゃいけないことが沢山あるのに、何をどう話せばいいのか分からなくて出来ない。

深春からもきっとメッセージが届いているけれど、それも何となく怖かった。

夜、眠る前にパパが私の部屋のドアの前まで来た。

「まふゆ。」

「…。」

「もう、寝てるか。」

「…これから寝る。」

「そうか…。まふゆ、学校、通い続けていいんだからな。ママとはちゃんと話をするから。」

「…。」

「おやすみ。」

パパの足音が遠ざかっていく。
ママとパパの寝室は同じ。
今の関係で同じ空間に居る二人のことを思うと息が苦しくなる。

ハンガーラックに掛けた制服を見た。
明日は学校があって、三日後には一学期の終業式。

一ヶ月とちょっとの夏休みで、私は答えを出そうと思う。

家族とのこと、深春とのこと。
これからの生活のことも。

この一週間、本当に疲れたなぁ。
野外学習一日目の、幸せだった時間だけを繰り返し繰り返し思い出して、目を閉じた。

あの時の映像だけを映画みたいに脳に映した。
深春の体温やキスの感触、二人でブランケットにくるまって眠った昼下がり。

深春に会いたい。深春に好きだって言いたい。
深春が居てくれるなら。

生きたい理由はそれだけしか無い。
深春を失うことのほうが、死よりもずっと怖い。

深春が居ないのなら死ぬのと同じ。
それは本当だ。

どんどん、どんどん、ぬかるみに足がハマッていくみたいに、睡魔が私を飲み込んでいく。

ブランケットにくるまれているみたいに。
呪文をかけられたみたいに。
深春を思えばいつだってそう。
私は幸せでいられるんだ。

深春だけだよ。
愛してる。
ずっと。本当だよ。
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