やわく、制服で隠して。
昼休み。
深春と一緒に職員室へ向かった。

クラスメイト達は本当に私と深春が“サボった“ことは知らないみたいで、今朝から何人かに体調を心配されたりして、ちょっと心苦しかった。

職員室に入ったら、担任も私達をしっかりと待っていて、入った瞬間に目が合った。

「ちゃんと来たわね。じゃあこっちへ。」

連れていかれたのはもちろん、生徒指導室。
一学期の間で二回も来るとは思っていなかった。
それでも私にしたら自己ベストだ。
中学生の頃は何回呼び出されたか分からない。
不名誉で何の得にもならない記録だ。

これも思った通り、二つの机の上には作文表紙が一枚ずつ用意されている。
職員室に来る時に筆箱も一緒に持ってくるように言われていたから、絶対に反省文を書かされるんだって、私達は分かっていた。

「座って。」

先生に促されて、私達は席に着いた。
向かいの席に先生が座って、三者面談みたいな形になった。

「先生。」

最初に口を開いたのは深春だった。

「何でみんなに言わなかったんですか?」

「言わなかったって?」

「私達が仮病を使って野外学習をサボったこと。」

「言う必要が無いからよ。」

「でも、私とまふゆは嘘をついて野外学習をサボりました。班のみんなにも迷惑かけたし。」

先生は私と深春を交互に見て、一度机を見つめるようにして何かを考えてから、もう一度私達を見た。

「どう言っていいか分からないけど。あの二人が今日ここに居ないのは野外学習をサボったからですって発表して、そこに何か生産性ってあるかしら。」

「生産性。」

呟いた私に、先生は微笑んだ。

「悪いほうになら事が運ぶかもしれない。でも何の利益も産まないし、担任として、わざわざあなた達を追い込む必要って無いじゃない。」

「私達は嘘をついたのに?」

深春は“嘘をついた”ということを強調した。
二人で計画して、嘘をついて先生を騙した。
クラスのみんなにも余計な心配をさせた。
それなのに先生は私達を守った。

私は、先生に裏切られたと思っていたのに。
そもそも騙したのは私達なんだから、裏切るも何も無いけれど。
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