やわく、制服で隠して。
カホに、トークを送ることを忘れていた。

夜、ベッドの上でダラダラしながらスマホをイジっていたら、ふと思い出した。

思い出したきっかけも、ハマッているアプリの漫画を読んでいたら、女子高生同士が盛大に喧嘩を始めたから。

トークアプリの通知がどんどん溜まっていっていることには気がついていた。
基本的に通知音は切っているから音は鳴らないけれど、他のアプリを閉じたり起動したりするたびに増えていく通知は、正直感情をカサつかせた。

自分の指先が、鉛のように重たくなったように感じる。
タップしたトークアプリには、案の定グループのトーク数が増え続けていて、それに加えてカホ個人からも何件かメッセージが届いている。

トーク画面を開かなくても見えている一番最後のメッセージは「切るつもり?」だ。
前後を見なくても「私達との関係を切るつもり?」だってすぐに分かった。

カホは、いつもそうだ。
ちょっと意見が食い違ったり、彼氏や他の友達を優先して、カホの誘いを一回断っただけで、グループを抜けるつもりかと感情を昂らせる。

カホのクラス内での立場や交友関係を考えたら、グループを抜けることによって自分がどうなってしまうか、誰にだって分かっていた。

だけどきっと、一番寂しくて孤独で、一人になるのが怖かったのはカホ自身なんだろうと思う。
人が集まれば集まるだけ、孤独に対する恐怖は増していく。

だからこちらがカホに“捨てられない”限り、下手に出て謝って機嫌取りをしていれば、カホの機嫌はすぐに直った。

そういうカホの性格や言動から甘い蜜を吸っていたのは私も同じだ。
カホのグループに居ることで自分自身にだって箔が付いたように思っていたのだから。

本当に何も無かったのは私だ。
咎めることもせずカホのせいにして、だけど自分はずっと安全な場所に居続けた、私が誰よりもズルかった。
< 11 / 182 >

この作品をシェア

pagetop