やわく、制服で隠して。
体育祭の一番最後の種目はリレー。
各クラス四人が選手で、一年生から順番に走る。

深春はアンカーだった。
責任重大だなぁって、種目が決まった日、深春はしかめっ面だった。

だけどうちのクラスは一走者目からぶっち切りの一位。二位も三位も抜かれないまま深春にバトンが回って、更に差を広げて一位のまま、深春がゴールテープを切った。

ごぼう抜きなんて派手なことは無かったけれど、リレーはすごく盛り上がった。

キャーキャーと抱き合う選手達。
その中に深春も居て、あんなに女子高生らしいハシャぎ方をする深春を、思えば初めて見るかもしれない。

私達はまだ生きているのに、まるでアルバムをめくって、思い出を眺めているような気分だ。
どんな表情を見ても、どれだけの思い出を重ねても、それらは失くしていくことが決まっている。

不思議と悲しくは無い。
一人じゃないから。
人生でただ一人、誰よりも愛した人と一緒だから。

私と深春は不幸なんかじゃない。
あの笑顔を、これから待っているかもしれない幸せをお互いに奪い合っても。

話の中で飛び跳ねて仲間と笑い合う深春を、私は目に焼き付けた。
最期の日も深春の笑顔を憶えていられるように。
来世でもちゃんと、深春を見つけられるように。
< 170 / 182 >

この作品をシェア

pagetop