やわく、制服で隠して。
「もう、止められないの。このままどんどんまふゆを好きになって、まふゆに認めてもらえても、今までの常識とか恋愛観とか、そういうの全部、私が壊しちゃうかもしれない。」

「それでもいいよ。」

「でもっ…。」

「全部、深春の物にしてよ。」

「後悔しない?」

深春の目を見て頷いた。
深春はもう一度、さっきよりも強く吸って胸元に口付けをした。

ピリッとしたほんの少しの痛みと、私の胸にじわっと紅い華が咲いた。

「約束。私と深春の約束、ここに隠してて。」

「約束?」

「ずっと一緒だよ。どこまでも。」

「うん。」

ドサッと、深春に押し倒されて、私の視界は天井でいっぱいになった。
そう思ったら、すぐに薄い掛け布団と深春が覆いかぶさってきて、薄暗い中で視界は深春でいっぱいになった。

エタノールのような、消毒したてみたいな布団のツンとした匂いと、深春の甘い香り。

深春の吐息を感じた。とても静かだった。
トク、トク、トク。
心臓の音が混ざり合う。

瞬間、背筋がゾクッとする感覚が走った。
不快感じゃない。多幸感、高揚感。感じたことの無い、単純な“気持ち良さ”。
深春のくちびるが、私のくちびるに触れている。

短くて浅い、秘密のキスを、私達は何度も何度も繰り返した。

隠していた分のキスを。
壊れてしまいそうだった感情分。ぶつけ合うように私達はキスをした。

死んでもいいと思えた。
このまま深春と二人だけになって、何もかも失って、最後は深春と二人だけで。

制服の下に隠した二人だけの秘密を。約束を。
それだけが私の生きていたい理由だ。

「深春…っ…みは…」

「好き。好きだよまふゆ。」

絡めあった手のひら。二人で強く握りすぎて食い込む爪。
もっと強く。強く、甘い棘でもっと刺して。

次々と流れる深春の涙が、私の頬や首元を濡らしていく。
やまない雨みたいに、それでも醒めない恋が、私達を壊していった。
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