やわく、制服で隠して。
「終わったー!」

放課後、深春とハイタッチをして、背伸びをした。
一時間目にサボった自習の課題は、案の定居残りでやらされた。

数学と漢字のプリントが二枚ずつで、英語が一枚。
私は数学で苦戦して、深春は全然何も苦戦していなかった。
数学はほとんど深春の解答を丸写しした。

「ねぇ、そう言えばさ。」

「んー?」

筆箱とかノートを鞄にしまう深春に話しかける。
深春は私を見て微笑んだ。その顔が前よりももっと綺麗に見えるのは、やっぱり“心境の変化”だろうか。

「あの…バスケ部の先輩のこと、どうなったの。」

深春は少し考える素振りを見せてから、思い出したように、「あぁ、これ?」と言って、財布を取り出して、紙幣を入れるところから何かのチケットを取り出した。

映画の前売り券。中高生の間で一番話題になっていて、人気の男性アイドルと若手の女優が演じるラブストーリー。

「一緒に行こうって。」

「へぇ…。行くの?」

「行くわけないじゃん。その場で断ったよ。」

「でもチケット…。」

「もし気が変わったらって、返させてくれなかったの。」

「そっか。」

私は深春から目を逸らして、机の上の片付けを始めた。そしたら深春が急に笑い出して、びっくりしてもう一度深春を見た。

「嫉妬してる?」

「嫉妬?」

「だってほら。」

深春が二つ合わせた机から体を乗り出して、私に腕を伸ばして、人差し指でトン、と眉間を押さえた。

「皺。すごく不機嫌そうな顔。」

「そんなことない。」

恥ずかしくなって、深春に押さえられた眉間をゴシゴシと擦った。
赤くなるよって深春は笑いながら、私の手を止めた。
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