やわく、制服で隠して。
振動音は明らかに私のスマホからだった。
しつこく鳴り続けたスマホは一回止まって、それからまた震え出した。

深春を起こさないようにゆっくりと体を起こして、私に掛けてくれていたブランケットを深春に掛けた。

そっとベッドから降りて、丸まった体勢で腕を伸ばしてスマホを掴む。

画面をタップしたら“着信中”と“ママ”という文字が上下に並んでいた。

おかしいと思った。
私が野外学習に行くことを知っているはずなのに、こんなにしつこく電話を掛けてくるなんて。

嫌な予感がする。
出たほうがいいのか、野外学習中だから気づかなかったってシラを切るか。

迷っているうちに着信は切れた。
けれどすぐに、トークアプリの通知マークがついた。
開かなくてもママだって分かった。

ドキドキしながら画面をタップする。
トークアプリを開いたら、ママとのトークルーム自体を開かなくてもメッセージは見える。

“出なさい。”

たった一言だけのメッセージ。
野外学習中だと思っている人が送ってくるようなメッセージじゃない。
ドクン、ドクンと心臓が激しく鳴った。

「深春。深春、起きて。」

気持ち良さそうに眠る深春をゆすって起こした。
小さく声を出して、寝ぼけているような素振りを見せながら、深春は私の腕に顔を寄せた。

愛おしくて、そのまま私も深春に身を委ねていたかったけれど、最悪なことに今はそれどころじゃなかった。

「深春、お願い。起きて。大変なの。深春…!」

少し強めにゆすったら、深春の目がパチっと開いた。
二回、長めに瞬きをしてから、目をこすって寝転んだまま、深春は私を見上げた。

「まふゆ。ごめんね。けっこう寝ちゃってたかも。」

「深春、大変なの。起きられる?」

んん、と駄々をこねるみたいな声を出して、深春は起き上がった。
クーラーが効いているから寒いのか、深春はブランケットでしっかり自分の体をくるんだ。

「どうしたの。」

私の肩に頭を乗せて、一緒にスマホを覗き込んでくる。

「これ。」

まだトークルームは開かないまま、ママからの“出なさい。“のメッセージを見せた。
それから画面を切り替えて、着信履歴も見せた。

深春は私の肩から頭を離して、うわぁ…と唸った。
私も一緒に唸りたかった。
やっぱりどう考えても、私達の行動がバレているって思った。
< 83 / 182 >

この作品をシェア

pagetop