やわく、制服で隠して。
「サボってること、バレてるよね?」
「…多分。」
深春と顔を見合わせる。
不安と、もう先が分かっていて落胆している表情。
きっと私もおんなじ顔をしている。
「電話、してくるね。」
深春の部屋を出て、ドアを閉めた。
本当は隣に居て欲しかったけれど、スマホから漏れるママの声はきっと、ヒステリックな声だ。
それを深春に聴かれるのが恥ずかしかった。
着信履歴から、ママに電話を掛け直した。
スマホを耳に当てる前に、画面の表示は“呼び出し中”から“通話中”に変わった。
スマホを耳に当てても、何も聞こえない。
「…ママ?」
微かに周りの環境音が聞こえるけれど、ママの声は聞こえなかった。
「ママ。ごめんなさい。」
それから数秒、間が開いて、何も言わないなら切ってしまおうかと魔が刺した時、ようやくママの声が聞こえてきた。
「いい加減にしなさい。」
「ごめんなさい。」
「何が?何がごめんなのよ!」
思った通り、急にママの声のボリュームが大きくなって、私はスマホを耳から離した。
ギリギリ、ママの声の“音”が聞こえる位置でその音を聞いた。
しきりに何かを捲し立てているけれど、はっきりとした言葉は聞き取れない。
私を罵倒していることは分かる。
自分の心を抉られる言葉をわざわざ聞き続ける必要は無いと思った。
私が悪いんだっていうことは理解している。
でもママの口から出てくる言葉はもう、私の存在を否定したいだけの、感情論だけの言葉だ。
恥ずかしいとか、気持ち悪いって言葉が途切れ途切れに聞こえてきて、その音が終わるのを目を瞑ってジッと待った。
そんなに私を否定したいのなら、もう放っておいてくれればいいのに。
そしたら私はずっと、私だけを愛してくれる深春と居られるのに。
罵倒の言葉を散々怒鳴り続けて、今度は私の名前を連呼し始めたから、スマホを耳に当て直して、返事をした。
「聞いてるの!?」
「…うん。私が悪いよ。」
「当たり前でしょ!?分かりきったこと言うんじゃないわよ!いいから早く帰ってきなさい!」
「帰らない…。」
「はぁ?何ふざけたこと言ってんの。」
「今日は帰らない。帰りたくないの。明日ちゃんと…」
「ふざけるのも大概にしなさいよ。そちらのご両親も今夜中に戻られるから。早くしなさい。」
「え?」
「いいからさっさと帰って来いよ!」
ママが大声を張り上げて、電話は切れた。
頭がズキズキ痛む。ママの声が鼓膜に張り付いているみたいだ。
スマホを強く握って、深春の部屋のドアをノックした。
返事は無い。ドアを少しだけ開けて隙間から覗いたら、深春もスマホを握り締めて、ぼーっと画面を見つめている。
ゲームオーバー。
私と深春の二人だけの世界はあっけなく壊れてしまった。
「…多分。」
深春と顔を見合わせる。
不安と、もう先が分かっていて落胆している表情。
きっと私もおんなじ顔をしている。
「電話、してくるね。」
深春の部屋を出て、ドアを閉めた。
本当は隣に居て欲しかったけれど、スマホから漏れるママの声はきっと、ヒステリックな声だ。
それを深春に聴かれるのが恥ずかしかった。
着信履歴から、ママに電話を掛け直した。
スマホを耳に当てる前に、画面の表示は“呼び出し中”から“通話中”に変わった。
スマホを耳に当てても、何も聞こえない。
「…ママ?」
微かに周りの環境音が聞こえるけれど、ママの声は聞こえなかった。
「ママ。ごめんなさい。」
それから数秒、間が開いて、何も言わないなら切ってしまおうかと魔が刺した時、ようやくママの声が聞こえてきた。
「いい加減にしなさい。」
「ごめんなさい。」
「何が?何がごめんなのよ!」
思った通り、急にママの声のボリュームが大きくなって、私はスマホを耳から離した。
ギリギリ、ママの声の“音”が聞こえる位置でその音を聞いた。
しきりに何かを捲し立てているけれど、はっきりとした言葉は聞き取れない。
私を罵倒していることは分かる。
自分の心を抉られる言葉をわざわざ聞き続ける必要は無いと思った。
私が悪いんだっていうことは理解している。
でもママの口から出てくる言葉はもう、私の存在を否定したいだけの、感情論だけの言葉だ。
恥ずかしいとか、気持ち悪いって言葉が途切れ途切れに聞こえてきて、その音が終わるのを目を瞑ってジッと待った。
そんなに私を否定したいのなら、もう放っておいてくれればいいのに。
そしたら私はずっと、私だけを愛してくれる深春と居られるのに。
罵倒の言葉を散々怒鳴り続けて、今度は私の名前を連呼し始めたから、スマホを耳に当て直して、返事をした。
「聞いてるの!?」
「…うん。私が悪いよ。」
「当たり前でしょ!?分かりきったこと言うんじゃないわよ!いいから早く帰ってきなさい!」
「帰らない…。」
「はぁ?何ふざけたこと言ってんの。」
「今日は帰らない。帰りたくないの。明日ちゃんと…」
「ふざけるのも大概にしなさいよ。そちらのご両親も今夜中に戻られるから。早くしなさい。」
「え?」
「いいからさっさと帰って来いよ!」
ママが大声を張り上げて、電話は切れた。
頭がズキズキ痛む。ママの声が鼓膜に張り付いているみたいだ。
スマホを強く握って、深春の部屋のドアをノックした。
返事は無い。ドアを少しだけ開けて隙間から覗いたら、深春もスマホを握り締めて、ぼーっと画面を見つめている。
ゲームオーバー。
私と深春の二人だけの世界はあっけなく壊れてしまった。