やわく、制服で隠して。
もう一度ノックをして、部屋に入った。
「深春。」
ゆっくりと私に顔を向けた深春は、泣きそうな目をしている。
「もしかして、おじさん達帰ってくるって?」
「…うん。」
「そっか…。それまで待ってるよ。謝りたいし。」
「ううん。まふゆは早く帰って。相当怒られたでしょ?遅くなったらいけないから…。」
「でも…」
「いいの。それに、今日は母さん達に会わないほうがいいと思う。二人の旅行…台無しにしちゃったし…。でもそれは私のせいだから!まふゆは早く帰って、自分のことだけ考えていればいいから!」
深春がごめんねって言って、私を抱き締めた。
本当は帰りたくない。おじさん達にちゃんと謝りたいし、深春を一人にするのも嫌だった。
でも、私がここに留まれば、深春の親はもっと嫌な気持ちになるかもしれない。
「明日、会える?」
訊いた私に、深春は首を横に振った。
「多分、会えないと思う。理由は…、帰ったらまふゆも分かると思う。」
「…分かった。じゃあ…また。落ち着いたら連絡するね。」
私と深春は一緒に一階のリビングに下りた。
置いていた荷物を抱えて、玄関に向かう。
玄関の外は、目が覚めた時よりは薄暗くなり始めている。
ずっと冷房の効いた部屋にいたから、急に湿度の高い場所に出てむせそうだった。
「まふゆ、本当にごめん。全部私のせいだから。まふゆは悪くないからね。」
「そんなことない。そんな風に言わないで。私と深春は、共犯者だよ。」
深春に笑って欲しくておどけて見せたけれど、深春は笑わなかった。
ずっと泣きそうな目のまま。私だって泣きたかった。
今日の夜も、明日も明後日の朝も一緒に居られるはずだったのに。
二人だけの野外学習はあっけなく終わってしまって、確かに私達が悪いけれど、大人の力には敵わない。
私達子供は結局は大人に従わなければいけない。
学生で、所属している学校があって、家庭で養われているんだから当たり前だけど、それが無性に悔しかった。
「じゃあね。」
「うん。送れなくてごめんね。」
私は首を振って、深春に背を向けた。
今朝とは全然違う。泣きたくて悔しくて、嫌な気持ちでいっぱいだった。
抱えたボストンバッグが異常に重たく感じた。
なのに、家までの道は、やけに短く感じて、自分の家の屋根が見え始めた頃にはそのまま反対方向へ逃げ出してしまいたかった。
玄関のドアノブに手を掛ける。
このまま固まってしまったらいいのに。
一生この中に入れなくていい。
ママの顔を見たくない。
さっきからまたずっとスマホが振動している。
私を脅迫するみたいに震え続けるスマホ。
この家の中に、きっともう私の幸せなんて無い。
「深春。」
ゆっくりと私に顔を向けた深春は、泣きそうな目をしている。
「もしかして、おじさん達帰ってくるって?」
「…うん。」
「そっか…。それまで待ってるよ。謝りたいし。」
「ううん。まふゆは早く帰って。相当怒られたでしょ?遅くなったらいけないから…。」
「でも…」
「いいの。それに、今日は母さん達に会わないほうがいいと思う。二人の旅行…台無しにしちゃったし…。でもそれは私のせいだから!まふゆは早く帰って、自分のことだけ考えていればいいから!」
深春がごめんねって言って、私を抱き締めた。
本当は帰りたくない。おじさん達にちゃんと謝りたいし、深春を一人にするのも嫌だった。
でも、私がここに留まれば、深春の親はもっと嫌な気持ちになるかもしれない。
「明日、会える?」
訊いた私に、深春は首を横に振った。
「多分、会えないと思う。理由は…、帰ったらまふゆも分かると思う。」
「…分かった。じゃあ…また。落ち着いたら連絡するね。」
私と深春は一緒に一階のリビングに下りた。
置いていた荷物を抱えて、玄関に向かう。
玄関の外は、目が覚めた時よりは薄暗くなり始めている。
ずっと冷房の効いた部屋にいたから、急に湿度の高い場所に出てむせそうだった。
「まふゆ、本当にごめん。全部私のせいだから。まふゆは悪くないからね。」
「そんなことない。そんな風に言わないで。私と深春は、共犯者だよ。」
深春に笑って欲しくておどけて見せたけれど、深春は笑わなかった。
ずっと泣きそうな目のまま。私だって泣きたかった。
今日の夜も、明日も明後日の朝も一緒に居られるはずだったのに。
二人だけの野外学習はあっけなく終わってしまって、確かに私達が悪いけれど、大人の力には敵わない。
私達子供は結局は大人に従わなければいけない。
学生で、所属している学校があって、家庭で養われているんだから当たり前だけど、それが無性に悔しかった。
「じゃあね。」
「うん。送れなくてごめんね。」
私は首を振って、深春に背を向けた。
今朝とは全然違う。泣きたくて悔しくて、嫌な気持ちでいっぱいだった。
抱えたボストンバッグが異常に重たく感じた。
なのに、家までの道は、やけに短く感じて、自分の家の屋根が見え始めた頃にはそのまま反対方向へ逃げ出してしまいたかった。
玄関のドアノブに手を掛ける。
このまま固まってしまったらいいのに。
一生この中に入れなくていい。
ママの顔を見たくない。
さっきからまたずっとスマホが振動している。
私を脅迫するみたいに震え続けるスマホ。
この家の中に、きっともう私の幸せなんて無い。