やわく、制服で隠して。
「それは、あの家庭教師とは関係ない?」

「関係ないよ。あのね、パパ。私だって本当は混乱っていうか、びっくりしたんだよ。中学までは友達のことすら本当は…大切に想えていなかった。学校に行くのだってダルいだけだし授業だってツマんない。適当な友達とツルんでその場をやり過ごして。そんな最低な人間関係を自分で作ってた。」

パパは何も言わない。ママとは決定的に違うところ。
ただ何も言わずに私の話を聞いてくれる。それだけを、私は親に、ずっとして欲しかった。

「多分、私はもう入学式の日に深春に一目惚れしてた。自分がそう思うなんて笑っちゃうけど、運命かもって思った。深春は他の誰とも違う。私を想ってくれてるし、私も深春の為なら何でも出来るよ。」

「それは、依存ではなく、か?」

「依存…。どうだろう。正直、今の私には深春が居なきゃダメだって思う。深春が居なくなったらどうしていいか分かんない。でもそれよりも深春が好きだって、深春のことを考えるたびに強く思うし、ドキドキするし、ずっと一緒に居たい。」

パパが私の頭を撫でた。そっと、とても弱い力で。簡単に壊れてしまう物を包み込むみたいに。

「パパ。」

「ん?」

「私のこと、恥ずかしいって思う?」

「いいや。」

「でも、世間の人に私のこと言えないでしょ。パパがおじいちゃんになっても私は結婚しなくて、孫だって見せてあげられないかもしれない。」

「自分の老後の為にまふゆは居るわけじゃないぞ。」

パパが笑いながら言った。
それだけで私の心は救われるはずなのに、何故だか余計に苦しくなった。

確かに家族を壊したのは私かもしれないし、ママをおかしくさせた責任だってあるだろう。
本当はパパだって全てを許せるわけでは無いと思う。

それでも私はやっぱり深春のことが好きで、それは絶対に後ろめたいことじゃない。
誰が解ってくれなくても、私はこの想いだけは消せない。

いつか、なんてもう思わない。
いつかママが理解してくれるまで、いつか家族が元に戻れるまでなんて、その希望はもう要らない。

深春を好きな気持ちは消えないから。
その感情ごと全部が“私”だから。

「パパ、ごめんなさい。」

「まふゆが幸せならそれでいいんだ。でもな、今日のことは悪いことだ。分かるな?」

「うん。ごめんなさい。」
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