椅子こん!
5.椅子と付き合う
なぜ北国かというと、恋愛至上主義者の根城がそう言われているからだ。
ウドドーン!!
外で巨大な花火、のような雷鳴が鳴り響いた。一瞬部屋が暗くなり雷が辺りを照らしたが、女の子も、彼女も平然としている。
……キャッ!
とか言わないのだなと少し驚く。『あの場所』のやつらは皆かなり悲鳴をあげ雷怖いと主張していたから。
すぐに灯りが再びつく。
「よーし、天気が良くなったら恋人届けを出すぞ!」
彼女はむしろ元気そうだった。
女の子はちょこんと近くに佇んでいる。
「言っておくが……結ばれたとしても役場では、対物性愛を恋人として処理してくれないぞ」
「ええええっ!!!」
「ええええっ!!!」
彼女は頭を抱えて叫んだ。
隣の女の子も涙目になる。
「せっかく恋人が出来るかもしれないのに!」
彼女のショックを表すかのようにまた外で雷鳴がとどろいた。
なんだか本当に、悲しそう。
( 物、か……)
家に溢れた雑貨類は少し古い時代の物がいくつかあった。
アンティークな趣味でないのならこれは、親か誰かの時代のままなのだろう。
「どうしてもってなら、名義的に俺と付き合うか? そのあとで、対物性愛なりなんなりすればいい」
「人間と付き合うなんて習ってない!
親だって私に話しかけなかったの! 話しかけたってすぐに止めに入られるだけよ」
「止めに入られる?」
彼女はハッと口を襲った。
「何でもない、です」
「はあ……」
「とにかく、あの、ありがとう……あの、どうして、そこまで考えてくれるの?」
どうして、だろう。
聞かれて、考えてみた。
どうしてだろう。
けれどあんなに嬉しそうにする
子を俺はこれまででも見たことがなかった。
「いや……」
放置して強くなる、そうやって育てられた子ども。
まっすぐな目をしている。
雷を怖がらない。
強くなる、の結果なんだろう。
付き合うことを、何かの壁で遮断されている。
けれどコミュニケーションが物や人外とならとれるのなら、それもひとつの生き方。
「……はぁ、と言っても、椅子との交際を認めて貰うのを待っていたら、何年も経ってしまうぞ」
なんで、俺はこんなに、気にかけているんだろうかと思いながらもそう口にする。
罪滅ぼしに近いのかもしれない。よくわからないが、観察さんが家の真上を飛び回るようになってから彼女のプライバシーは、あって無いようなものなんだろう。それに、誰からも避けられている。とても、これが苛めで済む話には見えなかった。
それに多少なり荷担していることは、やはり実感は無いがそれでも、とんでもないことなのだろう。
戦争から抜け出した国に、爆弾が落ちてしまえば良いと言う政治家のような。軽い気持ち以上の意味がそこにはあった。
「わかって、る……わかってるけど……ちょっと、その、人間同士しか、認めて貰えないのが、思ってたより、キツくて…………ほら、放置されてたのに、放置してる側だけが、認知されるみたいで」
今にも泣き出しそうな彼女。
強く逞しく、なったというにはあまりに小さな肩。
頼りなく震えている。
放置して強くなった結果。
「なあ、もしかしてサ──」
サイコに狙われてるんじゃないか?
そう聞いてしまいそうだった。
サイコは盗賊団体の頭で、自らをガラスと名乗る。
その活動は、「ティラル」とか「飲み会」「ゴロゴロ」などと呼ばれていた。
「え?」
「いや……知らないなら、いいんだ」
なぜ北国かというと、恋愛至上主義者の根城がそう言われているからだ。
ウドドーン!!
外で巨大な花火、のような雷鳴が鳴り響いた。一瞬部屋が暗くなり雷が辺りを照らしたが、女の子も、彼女も平然としている。
……キャッ!
とか言わないのだなと少し驚く。『あの場所』のやつらは皆かなり悲鳴をあげ雷怖いと主張していたから。
すぐに灯りが再びつく。
「よーし、天気が良くなったら恋人届けを出すぞ!」
彼女はむしろ元気そうだった。
女の子はちょこんと近くに佇んでいる。
「言っておくが……結ばれたとしても役場では、対物性愛を恋人として処理してくれないぞ」
「ええええっ!!!」
「ええええっ!!!」
彼女は頭を抱えて叫んだ。
隣の女の子も涙目になる。
「せっかく恋人が出来るかもしれないのに!」
彼女のショックを表すかのようにまた外で雷鳴がとどろいた。
なんだか本当に、悲しそう。
( 物、か……)
家に溢れた雑貨類は少し古い時代の物がいくつかあった。
アンティークな趣味でないのならこれは、親か誰かの時代のままなのだろう。
「どうしてもってなら、名義的に俺と付き合うか? そのあとで、対物性愛なりなんなりすればいい」
「人間と付き合うなんて習ってない!
親だって私に話しかけなかったの! 話しかけたってすぐに止めに入られるだけよ」
「止めに入られる?」
彼女はハッと口を襲った。
「何でもない、です」
「はあ……」
「とにかく、あの、ありがとう……あの、どうして、そこまで考えてくれるの?」
どうして、だろう。
聞かれて、考えてみた。
どうしてだろう。
けれどあんなに嬉しそうにする
子を俺はこれまででも見たことがなかった。
「いや……」
放置して強くなる、そうやって育てられた子ども。
まっすぐな目をしている。
雷を怖がらない。
強くなる、の結果なんだろう。
付き合うことを、何かの壁で遮断されている。
けれどコミュニケーションが物や人外とならとれるのなら、それもひとつの生き方。
「……はぁ、と言っても、椅子との交際を認めて貰うのを待っていたら、何年も経ってしまうぞ」
なんで、俺はこんなに、気にかけているんだろうかと思いながらもそう口にする。
罪滅ぼしに近いのかもしれない。よくわからないが、観察さんが家の真上を飛び回るようになってから彼女のプライバシーは、あって無いようなものなんだろう。それに、誰からも避けられている。とても、これが苛めで済む話には見えなかった。
それに多少なり荷担していることは、やはり実感は無いがそれでも、とんでもないことなのだろう。
戦争から抜け出した国に、爆弾が落ちてしまえば良いと言う政治家のような。軽い気持ち以上の意味がそこにはあった。
「わかって、る……わかってるけど……ちょっと、その、人間同士しか、認めて貰えないのが、思ってたより、キツくて…………ほら、放置されてたのに、放置してる側だけが、認知されるみたいで」
今にも泣き出しそうな彼女。
強く逞しく、なったというにはあまりに小さな肩。
頼りなく震えている。
放置して強くなった結果。
「なあ、もしかしてサ──」
サイコに狙われてるんじゃないか?
そう聞いてしまいそうだった。
サイコは盗賊団体の頭で、自らをガラスと名乗る。
その活動は、「ティラル」とか「飲み会」「ゴロゴロ」などと呼ばれていた。
「え?」
「いや……知らないなら、いいんだ」