椅子こん!
合体
椅子さんと……
物に、なりたかった。
誰も、私を見ない。
誰も、私に何も感じない。
余計なことも言わず、
居るだけで誰かを幸せにする。
物になりたかった。
ずっと、こんな風に生まれるくらいなら、私は物になりたかった。物になりたかった。
「──」
なんの感情も抱かず、なんの感情も抱かせずに、そしたら、スキダも生まれなくて、お父さんとお母さんもスキダに取りつかれて殺し合わなくてよくて、
ただ黙ってそこに佇んでいれば誰かを幸せにして、ニコニコしていれば、何も言われなくてよくて、
どうして私は、人の身体で生まれてきてしまったんだろう。なにも感じず、ただ、ニコニコしていられるような、物になればきっと幸せだった。
みんな置かれた置物。
人形やぬいぐるみ。
どうして私は、正しく生まれて来られなかったんだろう。
黙ってニコニコしていれば、
誰も、私に求めない。
何も、感じたりしない。
スキダも生まれなくて、殺し合わなくて良かった。
感情なんかみんな死んじゃえ。みんな、物だったら良かったのに。なにも感じなきゃ、なにも起きなかったのに。
──私たちはスキダの呪いに逆らえない。
殺し合いをするのは、スキダが互いを呪うから。
感情を持つと、それを養分にスキダが生まれてしまう。誰かに襲いかかる凶悪な呪い
が生まれてしまう。
誰も、この真実を伝えない。誰も、この真実を見ようとしない。
感情さえなければ、あれに取りつかれたりしない。
誰かを襲うこともない。
人殺しの呪いを、
仕方ないなんて言わない。
何かを選ぶって、すごく重要で、今までなにを選んだのか、なにを、持っているか、自分という意識が自分である証拠だから、それが呪われていたのなら、仕方がない。
なりたかった。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。
物に。物に。物に。物に。
物に。『お前の信じる椅子を信じろ!』
物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。
物に。『悪魔は、幹部が──学会が自らが手にかけた『作品』だった……現実の事件は彼らにとっては『興味深い作品』以外の意味はない……
証拠を、確かめて遊ぶゲームだった』物に。物に。物に。
物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。
物に。物に。物に。物に。
物に。物に。
誰も、私を見ない。
誰も、私に何も感じない、そしたら、座ってニコニコしていれば、お人形さんみたいに、誰かを幸せに出来たのに
。
「なりたかったよ……」
物になりたかった。
ゆっくり、ゆっくり、念じると、腕から木が伸びていく。それはほどけて、椅子さんに絡み付く。自分とは違ったざらざらした感覚が、自分の木の素肌に混じり合う。
「ねぇ──椅子さん」
私は、物。
「私……椅子さんが好き。私が死んだときも、椅子か机になりたい」
枝と枝、幸せが、混じり合う。周囲が黄金に輝いている。
椅子さんが呼応するように、私の腰に手を回す。
「──あぁ……」
木に、なって、椅子さんになっていく。ほどけて、絡み合う。
私。幸せってきっと、こういうことなんだね。これは偽物なんかじゃない、私の中にある本物。
絡み合う二人をジャマするものはなく、私と椅子さんは、ひとつになった。
「──あたたかい……」
ふわ、と羽根のはえた身体が浮く。輝いている枝が、人型になったロボットに絡み付く。私たちは枝を伸ばしながら、彼女の動力部に回り込む為に浮いた。既に枝は彼女の短剣では切れず、身動きが出来ないでいる。
頭部のみが緩やかに回転して、レーザーを放つ。
ゴメンナサアアアアイ!
ゴゥオメンナサアアアアイ!
こまめにやってくるそれをかわして、また背後に回り込むにも、反応速度が速い。
しかしロボットさんの攻撃になれてくると、かわすのはそんなに難しくはなかった。
どうにか肩から背後に降りて、背中に回る。背中パーツに取り外せそうな蓋を発見した。
「この蓋らしきものを壊したら、エネルギー源を取り出せるかな?」
44街では今、地球に優しい充電式電池が流行っている。恐らく、これの動力源も、充電しやすいところについているはず。
そういえば……ヨウさんは今どこに居るんだろう。そこに乗っている、と思っているが、さっきから何も話さないような。
「ヨウさん! とにかくこれで、おしまいだよ、せーの!」
蓋を外し、電池を取り出すだけだ。
しかしその前に甦られてはたまらないと気付いた。
先に告白しようと手にしたナイフを掲げる。
そして浮いているクリスタルに突き刺──さらない。
「……あれぇ、堅いな。前は、こうしてなかったっけ……えっと」
「マカロニ、マカロニなのか!」
布を掻き分けて、アサヒが飛び込んでくる。
「今、マカロニの声がした!」
アサヒ……
「なぜきたの!?」
目の前──頭上のロボットから、つんざくような悲鳴が聞こえた。
「マカロニ……居るのか?」
「アサヒ! こいつは違」
私はそれはマカロニではないと言いかけるも、アサヒの嬉しそうな顔に思わず黙ってしまう。
「アナタガ認識しなければ、私のコトナンテ忘れてくれていれば、私は、物にナレタノニ!!」
物に、なりたかった。
誰も、私を見ない。
誰も、私に何も感じない。
余計なことも言わず、
居るだけで誰かを幸せにする。
「ドウシテ、私を、縛り付けるの! 私は、何もオモイタクナイ……何も感じたくない! ただ置かれているだけのモノに、ドウシテ、そこまで!」
物に、なりたかった。
ずっと、こんな風に生まれるくらいなら、私は物になりたかった。
「ユルサナイ……!」
彼女?は、アサヒに向かって短剣を振り上げる。
「アサヒ!」
私は叫んだ。背後に回り込んでいるからすぐに出られない。
「物になって、ナニガ悪いの!? 誰も、私になにか思ったりしない! 置物なんだから!」
──どうして、私は人の身体で生まれてしまったんだろう。
誰にも害も何も与えず、ただニコニコと頬笑むだけの、
物になりたかった。
「迎えに、行けなくて、ごめんな……」
アサヒが短剣を掴む。
素手で白羽取りしたようだが、刃先の鋭さで皮膚がいくらか切れて血が流れていた。
「そこに、居たんだ」
アサヒの手から伝った血が、短剣に流れて結晶化していく。
「ずっと、探した」
力を込めれば振り払えるかもしれないのに、ロボットさんはその場から動こうとしなかった。
「──あの日、どうして、お前を独りで帰してしまったのかって、今も、考えてるんだ。ずっと、ずっと、やっぱり、俺は──」
結晶に包まれて、短剣が溢れ落ちる。
「お前のことが好きだ」
アサヒの言葉に応えるようにロボットさんの心臓部が紅く輝いた。その光が、空に浮いているスキダを取り込むように包んでいく。
それを受けて、輝いて堅かったスキダはやがて光をなくし、柔らかくなっているようだった。
「今だ!」
いきなりアサヒがどこかに叫ぶ。
──というか、私たち?
「告白っ、行くよ!」
椅子さんと一体化した私は、その場で飛びあがり、魚に向かってナイフを突き刺した。
「死んだ本人に言いなさい! あんた気持ちが、悪い!」
内蔵をえぐり、そして最後に、傷口に椅子さんが触手からあの銃を向けた。
地面が揺れ、空に煙が上がる。
終わった……のだろうか。
浮いていた場所から着地。
して、正面に向かっていくと
ロボットさんの前面にも変化があった。心臓部が謎の膨張を起こし、丸い穴が空き始める。そしてやがてそこからビー玉のような真っ赤な石が転がり落ちる。
「──これ……」
頭の部分が開き、中から椅子ごとヨウさん……?が出てきた。年齢のわりに小さく、後ろから見たら子どもでしかないような……でもよくみると顔だけが老け顔という、なんというか特徴的な人だ。
「秘密の宝石だよ」
彼は悪びれもせずに答える。
「──人間の魂で作る、対魔兵器のコアだ。いやぁ、助かった、再現空間の構築機能は壊れてしまったみたいでね、
途中からコアの意思に操られていたんだ」
秘密の宝石……
「もう、椅子には挑まない。
俺の完敗だ。清清しいくらいに負けた、椅子と君には敵わない」
「……」
「おっと悪魔、そう睨むな。 君たちが倒してくれたお礼に、秘密の宝石について教えてあげよう」
彼は何も言っていないうちにペラペラ語りだした。
「秘密の宝石は人間の魂ごとスキダを結晶化し、炭素を宝石に加工した物。
それはスキダやキムを退けると言われて昔の幹部がみんな身に付けていたんだよ。
純度が高いかどうかは、スキダで決まっている。
美しいスキダを持つ人は、本人も美しい宝石になる」
「──それを、北で取引しているのか……!」
アサヒがヨウさんに殴りかかろうとしたとき、どこかからパトカーのサイレンが聞こえだした。ブンさんたちが呼んだのだろうか。
「あれ? 前──」
ふと、アサヒが私と椅子さんを見る。
「キャアアアア! 見ないでぇ!」
我にかえると急に恥ずかしくて、勢いよく離れた。
椅子さんと裸で絡み合っているのを見られてしまった。
再び椅子さんとゆっくり身体を解していくうちに、私は人の身体に戻る。
瞬間にしゃがみこむ。
「あっ、アサヒ! 服! 服!」
アサヒはやや目を丸くしながらも、着ていた上着をかぶせると、私の服を探しにいった。程無くしてほれ、と一式差し出される。
「ヨウ、いるー?」
布の向こうからブンさんの声。
「じゃあ、またあとでね」
彼は、兵器を置いてどこかに走っていった。
「俺も向こう行ってる!」
アサヒも気まずそうに耳を赤くしながらどこかに走っていく。私は急いで着替えた。
椅子さんと……
物に、なりたかった。
誰も、私を見ない。
誰も、私に何も感じない。
余計なことも言わず、
居るだけで誰かを幸せにする。
物になりたかった。
ずっと、こんな風に生まれるくらいなら、私は物になりたかった。物になりたかった。
「──」
なんの感情も抱かず、なんの感情も抱かせずに、そしたら、スキダも生まれなくて、お父さんとお母さんもスキダに取りつかれて殺し合わなくてよくて、
ただ黙ってそこに佇んでいれば誰かを幸せにして、ニコニコしていれば、何も言われなくてよくて、
どうして私は、人の身体で生まれてきてしまったんだろう。なにも感じず、ただ、ニコニコしていられるような、物になればきっと幸せだった。
みんな置かれた置物。
人形やぬいぐるみ。
どうして私は、正しく生まれて来られなかったんだろう。
黙ってニコニコしていれば、
誰も、私に求めない。
何も、感じたりしない。
スキダも生まれなくて、殺し合わなくて良かった。
感情なんかみんな死んじゃえ。みんな、物だったら良かったのに。なにも感じなきゃ、なにも起きなかったのに。
──私たちはスキダの呪いに逆らえない。
殺し合いをするのは、スキダが互いを呪うから。
感情を持つと、それを養分にスキダが生まれてしまう。誰かに襲いかかる凶悪な呪い
が生まれてしまう。
誰も、この真実を伝えない。誰も、この真実を見ようとしない。
感情さえなければ、あれに取りつかれたりしない。
誰かを襲うこともない。
人殺しの呪いを、
仕方ないなんて言わない。
何かを選ぶって、すごく重要で、今までなにを選んだのか、なにを、持っているか、自分という意識が自分である証拠だから、それが呪われていたのなら、仕方がない。
なりたかった。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。
物に。物に。物に。物に。
物に。『お前の信じる椅子を信じろ!』
物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。
物に。『悪魔は、幹部が──学会が自らが手にかけた『作品』だった……現実の事件は彼らにとっては『興味深い作品』以外の意味はない……
証拠を、確かめて遊ぶゲームだった』物に。物に。物に。
物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。物に。
物に。物に。物に。物に。
物に。物に。
誰も、私を見ない。
誰も、私に何も感じない、そしたら、座ってニコニコしていれば、お人形さんみたいに、誰かを幸せに出来たのに
。
「なりたかったよ……」
物になりたかった。
ゆっくり、ゆっくり、念じると、腕から木が伸びていく。それはほどけて、椅子さんに絡み付く。自分とは違ったざらざらした感覚が、自分の木の素肌に混じり合う。
「ねぇ──椅子さん」
私は、物。
「私……椅子さんが好き。私が死んだときも、椅子か机になりたい」
枝と枝、幸せが、混じり合う。周囲が黄金に輝いている。
椅子さんが呼応するように、私の腰に手を回す。
「──あぁ……」
木に、なって、椅子さんになっていく。ほどけて、絡み合う。
私。幸せってきっと、こういうことなんだね。これは偽物なんかじゃない、私の中にある本物。
絡み合う二人をジャマするものはなく、私と椅子さんは、ひとつになった。
「──あたたかい……」
ふわ、と羽根のはえた身体が浮く。輝いている枝が、人型になったロボットに絡み付く。私たちは枝を伸ばしながら、彼女の動力部に回り込む為に浮いた。既に枝は彼女の短剣では切れず、身動きが出来ないでいる。
頭部のみが緩やかに回転して、レーザーを放つ。
ゴメンナサアアアアイ!
ゴゥオメンナサアアアアイ!
こまめにやってくるそれをかわして、また背後に回り込むにも、反応速度が速い。
しかしロボットさんの攻撃になれてくると、かわすのはそんなに難しくはなかった。
どうにか肩から背後に降りて、背中に回る。背中パーツに取り外せそうな蓋を発見した。
「この蓋らしきものを壊したら、エネルギー源を取り出せるかな?」
44街では今、地球に優しい充電式電池が流行っている。恐らく、これの動力源も、充電しやすいところについているはず。
そういえば……ヨウさんは今どこに居るんだろう。そこに乗っている、と思っているが、さっきから何も話さないような。
「ヨウさん! とにかくこれで、おしまいだよ、せーの!」
蓋を外し、電池を取り出すだけだ。
しかしその前に甦られてはたまらないと気付いた。
先に告白しようと手にしたナイフを掲げる。
そして浮いているクリスタルに突き刺──さらない。
「……あれぇ、堅いな。前は、こうしてなかったっけ……えっと」
「マカロニ、マカロニなのか!」
布を掻き分けて、アサヒが飛び込んでくる。
「今、マカロニの声がした!」
アサヒ……
「なぜきたの!?」
目の前──頭上のロボットから、つんざくような悲鳴が聞こえた。
「マカロニ……居るのか?」
「アサヒ! こいつは違」
私はそれはマカロニではないと言いかけるも、アサヒの嬉しそうな顔に思わず黙ってしまう。
「アナタガ認識しなければ、私のコトナンテ忘れてくれていれば、私は、物にナレタノニ!!」
物に、なりたかった。
誰も、私を見ない。
誰も、私に何も感じない。
余計なことも言わず、
居るだけで誰かを幸せにする。
「ドウシテ、私を、縛り付けるの! 私は、何もオモイタクナイ……何も感じたくない! ただ置かれているだけのモノに、ドウシテ、そこまで!」
物に、なりたかった。
ずっと、こんな風に生まれるくらいなら、私は物になりたかった。
「ユルサナイ……!」
彼女?は、アサヒに向かって短剣を振り上げる。
「アサヒ!」
私は叫んだ。背後に回り込んでいるからすぐに出られない。
「物になって、ナニガ悪いの!? 誰も、私になにか思ったりしない! 置物なんだから!」
──どうして、私は人の身体で生まれてしまったんだろう。
誰にも害も何も与えず、ただニコニコと頬笑むだけの、
物になりたかった。
「迎えに、行けなくて、ごめんな……」
アサヒが短剣を掴む。
素手で白羽取りしたようだが、刃先の鋭さで皮膚がいくらか切れて血が流れていた。
「そこに、居たんだ」
アサヒの手から伝った血が、短剣に流れて結晶化していく。
「ずっと、探した」
力を込めれば振り払えるかもしれないのに、ロボットさんはその場から動こうとしなかった。
「──あの日、どうして、お前を独りで帰してしまったのかって、今も、考えてるんだ。ずっと、ずっと、やっぱり、俺は──」
結晶に包まれて、短剣が溢れ落ちる。
「お前のことが好きだ」
アサヒの言葉に応えるようにロボットさんの心臓部が紅く輝いた。その光が、空に浮いているスキダを取り込むように包んでいく。
それを受けて、輝いて堅かったスキダはやがて光をなくし、柔らかくなっているようだった。
「今だ!」
いきなりアサヒがどこかに叫ぶ。
──というか、私たち?
「告白っ、行くよ!」
椅子さんと一体化した私は、その場で飛びあがり、魚に向かってナイフを突き刺した。
「死んだ本人に言いなさい! あんた気持ちが、悪い!」
内蔵をえぐり、そして最後に、傷口に椅子さんが触手からあの銃を向けた。
地面が揺れ、空に煙が上がる。
終わった……のだろうか。
浮いていた場所から着地。
して、正面に向かっていくと
ロボットさんの前面にも変化があった。心臓部が謎の膨張を起こし、丸い穴が空き始める。そしてやがてそこからビー玉のような真っ赤な石が転がり落ちる。
「──これ……」
頭の部分が開き、中から椅子ごとヨウさん……?が出てきた。年齢のわりに小さく、後ろから見たら子どもでしかないような……でもよくみると顔だけが老け顔という、なんというか特徴的な人だ。
「秘密の宝石だよ」
彼は悪びれもせずに答える。
「──人間の魂で作る、対魔兵器のコアだ。いやぁ、助かった、再現空間の構築機能は壊れてしまったみたいでね、
途中からコアの意思に操られていたんだ」
秘密の宝石……
「もう、椅子には挑まない。
俺の完敗だ。清清しいくらいに負けた、椅子と君には敵わない」
「……」
「おっと悪魔、そう睨むな。 君たちが倒してくれたお礼に、秘密の宝石について教えてあげよう」
彼は何も言っていないうちにペラペラ語りだした。
「秘密の宝石は人間の魂ごとスキダを結晶化し、炭素を宝石に加工した物。
それはスキダやキムを退けると言われて昔の幹部がみんな身に付けていたんだよ。
純度が高いかどうかは、スキダで決まっている。
美しいスキダを持つ人は、本人も美しい宝石になる」
「──それを、北で取引しているのか……!」
アサヒがヨウさんに殴りかかろうとしたとき、どこかからパトカーのサイレンが聞こえだした。ブンさんたちが呼んだのだろうか。
「あれ? 前──」
ふと、アサヒが私と椅子さんを見る。
「キャアアアア! 見ないでぇ!」
我にかえると急に恥ずかしくて、勢いよく離れた。
椅子さんと裸で絡み合っているのを見られてしまった。
再び椅子さんとゆっくり身体を解していくうちに、私は人の身体に戻る。
瞬間にしゃがみこむ。
「あっ、アサヒ! 服! 服!」
アサヒはやや目を丸くしながらも、着ていた上着をかぶせると、私の服を探しにいった。程無くしてほれ、と一式差し出される。
「ヨウ、いるー?」
布の向こうからブンさんの声。
「じゃあ、またあとでね」
彼は、兵器を置いてどこかに走っていった。
「俺も向こう行ってる!」
アサヒも気まずそうに耳を赤くしながらどこかに走っていく。私は急いで着替えた。