椅子こん!




「私のなかには寄生虫が居るのっ!
いつかあなたを殺しちゃう~!」

「虫が、二人の絆を強くするっ!」



 ヨウの作った映画は既に完成を迎えていた。
勝ち負けはともかくも、今後も執着するということは変える気変えるしない。なかば癖のようなものだ。
「いいね! いいね!『いつかあなたを殺しちゃう~!』だって、ふふふふ」

帰宅したヨウは、壁に映されている公開前の内容(送ってもらった)を確認して一人にやついた。
「ウケるかなぁ~。ウケるかな~」
 あんな事があってもなお、彼には良心だとか倫理観というものは一切存在しない。
「いーから、始末書を書いてください!」
ブンが、ヨウの座るソファー背後から舌打ちするのも、会長らからの電話も線を抜いて無視。
 彼には生憎、他人のことを気にして凹むとか、そういう思考回路は持ち合わせが全くないのだ。兵器を置き去りにぼろぼろで帰宅した後、風呂にも入らずに彼はさっそく構想にとりかかる。
「しおたちは、聞いていませんけど」

 自分の後ろに誰かの気配を感じる。しかし振り向く気はない。
違法な兵器を独断で持ち出していたことが悪いこと、と思うことなどないし、そもそも悪いこと、がなにが悪いことなのかということすら何も関係がない。たとえ両親が逮捕されたって、そうだろう。ずっと昔から周りが素材としか考えていないし、善悪なんかそもそもないのかもしれなかった。

「次回作は椅子に恋をする主人公にしようかな!R18で、椅子と女の子の濡れ場を増やすぞ~!」
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