椅子こん!










◆◇◆◇◆◇

 昔、本家に遣えて44街の政治を本家の次に纏めていた役職があったんだが……
 男はそこに居て、そして勤務態度などから辞めさせられた。と、本家は言うが実際に何があったかまでは、わからない。
 その後にも、名誉ある役職に居るとあちこちに言っては自尊心を保っていたらしい。
彼だある日、発狂して暗殺の為に本家に忍び込んだ。
、そのとき書き記した職名と自分が居るという一言によって、取り押さえられたのだが──
わざわざそれを記すほどに、恨みが深く、理不尽に受け止めていたのだろう。

 やがて本家が関わる風習全てを憎むようになり、歴史書を読み漁った。
本家の風習、しきたり、大事なもの、全てを壊すことを望んだ。大樹も、その一つだ。
 自分が関わることの出来ない文化、自分が触れることの出来ない風習。44街の象徴としての、本家の神聖視。
 彼を蹴落とした本家が神聖視されるのだから、彼には神などいないも同然だった。
当時は44街を覆うほどだったあのシンボルが、どこに居ても目につくのだから、
憎かったことは想像に難くない。

  その後の彼は北国に逃げ込み、密売を通じて資産を蓄え、闇の組織を設立するようにまでなった。
  学会が話を持ち掛けてきたとき、彼はそれを利用して、44街の情報を売り買いする契約を結んだ。
 神聖とは、邪悪と表裏一体のもの。大抵、その下に何か封じていたのだろう。
 彼が少しずつ情報を売り渡し、44街の転覆を目論む頃には、少しずつ、スキダが現れ始めていたという。
伐採後も、彼は――彼らは目を付けていたんだ。

「会長の言う『昔話』は、もともと       の血筋だ」
 けれどいつからか、それを祟りなんて言い方をして、悪魔が居るという表現に塗り替えて、広めるようになった。
 何回か沈静化されていたけれど、10年前、再び活発になったらしい。

◆◇◆◇◆◇
< 211 / 224 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop