椅子こん!
えぴろーぐ
あれから、月日が過ぎた。
しばらくはせつのなりすましが続くかと思われたのだが、幹部逮捕に伴い、それも収束した。女の子もママと暮らすようになり、アサヒも自宅に戻って行った。
カグヤたちのお父さんは──
義手の男との関係性などで取り調べを受けている。
本家に取り入る為の利害が一致していたかもしれないんだって。
いろいろあったが、私の旅も終わり。
平和というのはやっぱり良いものだ。
────私?
今は、椅子さんと二人で暮らしている。もう、こそこそする必要も無いし、椅子さんとの書類だって提出できる。
「はい、椅子」
冬も近づく44街の朝。
私は台所にて、向かい合った椅子にスプーンを向ける。口がどこかわからないけど。
「ってやっぱり、飲めないか」
ぽた、と椅子の上にスープがこぼれるのをなめとって、ヤバい。やっぱり、私椅子のこと好きかもしれない、と思った。
笑わなくても泣かなくても会話しなくても、きっと、これからもそう思うと思う。
椅子と人間。それは案外幸せで、みんなが笑うとしても、幸せな毎日ならいいと思える…………
「って、なにそんなに照れてるの!? 椅子さんが、新婚ごっこをやろうと言い出したんだからね」
当時は恋愛をしないと処刑されるという社会が生まれたから成りゆきで、目についた椅子と付き合うことになった。
けれどそれがまさか、44街を揺るがすことになるとは思ってもみなかった。
恋愛する人って、嫌い!
嫌いって、いうか、なんだかずっと気持ち悪いって、思ってきた。
お父さんもお母さんも家に居たことがほとんどないし、正直言って一人愛を学ぶにも限界があるよね?
カッコいい人が現れればどうにかなる?
それは、ファンタジーのなかのお話!
恋愛にしか理解がない人が、都合よく作った設定なの!
何も知らないってのは結局、何も知らないってことなのよ!
私もずっと、そう思ってた。椅子に会うまでは…………
今は、椅子さんのことばかり考えている。
「椅子さんって、本家の人の家に居たってことだよね……」
ピンポンピンポンと、またもやインターホンが連打される。
「いやぁぁ!! もう石投げないでぇー!!」
心の中で嘆きながら、そーっとドアを開け……「いやっほー-----!!!!」
!?
銀髪緑眼の知らないお姉さんに抱きつかれた。
いろいろと、ついていかない。
なるべくあぽいんとめんとを取得しといてもらえるとありがたいです。
「なにっ、何!?」
「ついに会えたわね、私のインコちゃん!!!」
「私、インコじゃないよ!!!」
大音量ではしゃぐ彼女につられて思わず大音量で返す。
「椅子を連れてるなんて、妙な人、あなたしかいないわ!!! 間違いないっ!」
「とりあえず、はーなーしーてー---」
ぐるぐる目が回る。
彼女は、あっ、ごめんなさぁーい、と慌てて腕を離した。
「なっ、なんですか? 何しに来たんですか、誰ですか?」
「えー-? 私ぃ? 本家の使いの人ヨ」
か、軽いなぁ。
「学会が『居なくなって』怪物が減ったとはいえ、まだまだ、スキダの脅威があるじゃない? それでぇ、大樹を探していたんだけど、
そのときには伐採された後だったワケ。それでぇ、インコちゃんにあちこち探させてたんだけどぉ……おおっと、どこから話したらいいかな?」
「お茶入れてきます」
台所に戻り、お茶を入れて、玄関に向かう。
「簡単に言うとね、怪物を引き受ける人が居なくなっちゃったの!」
「……はぁ」
「そんなときに、最近スキダの怪物と椅子を持つ女の子が戦ってるって噂を聞いていてね、それが悪魔の子っていう話題を聞いて会いに行ったんだけど、そしたら接触禁止令出されてたワケです」
「なるほど」
「昔は、召喚士と、呼び出したスキダを殺す役で分かれていたらしいけど、そっちは見つからないんだよなぁ」
「はぁ……」
「でも、まぁ、片側が見つかればいいやっ!」
「なるほど」
「ってことでね! うちも、あ、うちって、本家の分家の一つね。人手が足りてないし、怪物退治を手伝って欲しいのヨ!」
「……なるほど」
お茶を飲む。
考える。
最近いろいろなことがあって、なんか、落ち着かない。
結局、スキダが全部消えるには至っていない。
怪物も居る。理由はわからないけれど、引力でスキダが浮いて居て、それが宇宙と通じているという研究者も居るらしく、今では、宇宙との繋がりが注目されていた。
あれからおばさんは訪ねてこなかった。
ただ、風の噂で聞いたところによると、44街は今、人形ブームらしい。
あちこちで関連グッズが売れているようだ。少しでも、誰かの傍に居て、生まれたかったあの子たちの傷が癒されるのを、願ってやまない。
私は、彼女の言葉に頷くより先に、一つ、質問をした。
「椅子を……好きな人って、どう思いますか?」
彼女はウフフと笑う。
あれから、月日が過ぎた。
しばらくはせつのなりすましが続くかと思われたのだが、幹部逮捕に伴い、それも収束した。女の子もママと暮らすようになり、アサヒも自宅に戻って行った。
カグヤたちのお父さんは──
義手の男との関係性などで取り調べを受けている。
本家に取り入る為の利害が一致していたかもしれないんだって。
いろいろあったが、私の旅も終わり。
平和というのはやっぱり良いものだ。
────私?
今は、椅子さんと二人で暮らしている。もう、こそこそする必要も無いし、椅子さんとの書類だって提出できる。
「はい、椅子」
冬も近づく44街の朝。
私は台所にて、向かい合った椅子にスプーンを向ける。口がどこかわからないけど。
「ってやっぱり、飲めないか」
ぽた、と椅子の上にスープがこぼれるのをなめとって、ヤバい。やっぱり、私椅子のこと好きかもしれない、と思った。
笑わなくても泣かなくても会話しなくても、きっと、これからもそう思うと思う。
椅子と人間。それは案外幸せで、みんなが笑うとしても、幸せな毎日ならいいと思える…………
「って、なにそんなに照れてるの!? 椅子さんが、新婚ごっこをやろうと言い出したんだからね」
当時は恋愛をしないと処刑されるという社会が生まれたから成りゆきで、目についた椅子と付き合うことになった。
けれどそれがまさか、44街を揺るがすことになるとは思ってもみなかった。
恋愛する人って、嫌い!
嫌いって、いうか、なんだかずっと気持ち悪いって、思ってきた。
お父さんもお母さんも家に居たことがほとんどないし、正直言って一人愛を学ぶにも限界があるよね?
カッコいい人が現れればどうにかなる?
それは、ファンタジーのなかのお話!
恋愛にしか理解がない人が、都合よく作った設定なの!
何も知らないってのは結局、何も知らないってことなのよ!
私もずっと、そう思ってた。椅子に会うまでは…………
今は、椅子さんのことばかり考えている。
「椅子さんって、本家の人の家に居たってことだよね……」
ピンポンピンポンと、またもやインターホンが連打される。
「いやぁぁ!! もう石投げないでぇー!!」
心の中で嘆きながら、そーっとドアを開け……「いやっほー-----!!!!」
!?
銀髪緑眼の知らないお姉さんに抱きつかれた。
いろいろと、ついていかない。
なるべくあぽいんとめんとを取得しといてもらえるとありがたいです。
「なにっ、何!?」
「ついに会えたわね、私のインコちゃん!!!」
「私、インコじゃないよ!!!」
大音量ではしゃぐ彼女につられて思わず大音量で返す。
「椅子を連れてるなんて、妙な人、あなたしかいないわ!!! 間違いないっ!」
「とりあえず、はーなーしーてー---」
ぐるぐる目が回る。
彼女は、あっ、ごめんなさぁーい、と慌てて腕を離した。
「なっ、なんですか? 何しに来たんですか、誰ですか?」
「えー-? 私ぃ? 本家の使いの人ヨ」
か、軽いなぁ。
「学会が『居なくなって』怪物が減ったとはいえ、まだまだ、スキダの脅威があるじゃない? それでぇ、大樹を探していたんだけど、
そのときには伐採された後だったワケ。それでぇ、インコちゃんにあちこち探させてたんだけどぉ……おおっと、どこから話したらいいかな?」
「お茶入れてきます」
台所に戻り、お茶を入れて、玄関に向かう。
「簡単に言うとね、怪物を引き受ける人が居なくなっちゃったの!」
「……はぁ」
「そんなときに、最近スキダの怪物と椅子を持つ女の子が戦ってるって噂を聞いていてね、それが悪魔の子っていう話題を聞いて会いに行ったんだけど、そしたら接触禁止令出されてたワケです」
「なるほど」
「昔は、召喚士と、呼び出したスキダを殺す役で分かれていたらしいけど、そっちは見つからないんだよなぁ」
「はぁ……」
「でも、まぁ、片側が見つかればいいやっ!」
「なるほど」
「ってことでね! うちも、あ、うちって、本家の分家の一つね。人手が足りてないし、怪物退治を手伝って欲しいのヨ!」
「……なるほど」
お茶を飲む。
考える。
最近いろいろなことがあって、なんか、落ち着かない。
結局、スキダが全部消えるには至っていない。
怪物も居る。理由はわからないけれど、引力でスキダが浮いて居て、それが宇宙と通じているという研究者も居るらしく、今では、宇宙との繋がりが注目されていた。
あれからおばさんは訪ねてこなかった。
ただ、風の噂で聞いたところによると、44街は今、人形ブームらしい。
あちこちで関連グッズが売れているようだ。少しでも、誰かの傍に居て、生まれたかったあの子たちの傷が癒されるのを、願ってやまない。
私は、彼女の言葉に頷くより先に、一つ、質問をした。
「椅子を……好きな人って、どう思いますか?」
彼女はウフフと笑う。