椅子こん!
新たなる出会いだよ!
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「青い子の嫁ぎ先が決まりました!
お迎えありがとうございますっ。
名前はサファイア!」
俺は……夢をみているんだろうか。
美しい女の子が、城の前でペコリと頭を下げているのが見える。
フラワーシャワーが、彼女を彩り、より世界を美しく祝福していて……
ああ、これは結婚式。彼女の隣をあるく婿どのが少し得意そうに胸を張っていた。
俺は、それを見る通行人。両脇にいる人だかりの、一人。仕事がひと段落付いたのでオージャンと一緒に此処にきている。
なんで、だったっけ…………
まあいいや、みんなに習って拍手をしながら、ちょっと抜けてみようか考えていたら、ふと、視線が妙なものをとらえた。
「やばいなー。分けられていないから、まず取ってきて扱う品物を把握するのが大変だ」
人だかりに混じって、挙動不審な男が辺りをキョロキョロして、そんなことを言っていた。角刈りに、黒い学生服のような服を着ている。
「んー、『闇商人オンリーのやかた』だとそれ前提で見れるのですけどな~」
どうやら彼は盗人で、しかし城の広さであまりにもわからな過ぎて、何の作品なのかほぼ見分けがついていないらしい。
「あいつは、盗賊だ。
初めて盗んだのは『水色の金属』と言われる珍しい鉱石だと自慢していたのを聞いたことがある。キムの手という道具を使う」
近くにいた蛙が、びよん、びよん、と跳ねて俺の肩にのっかってきた。
「え? ああ、詳しいな、蛙」
この世界の蛙は喋る。なぜか知らない。
俺や特別なやつにだけ聞こえるらしい。
「まあな! 蛙は井戸のなかに関しては物知りなんだ」
蛙は得意そうだ。
きれいな敷石のタイルの上を歩きながら、その先に連なる階段を遠目にみている姿はどこか人間のようでもあった
「ピンクと紫のバイカラーサファイアがほしいのですけど、なかなかこれだーっていう子に出会えないな……」
「パパラチア様のチャレンジに敗れたソーティング付きのピンクサファイアちゃんとかにもすごく可愛い子が居たりするので侮れないですね」
「ピンクスピネルもかわいいのだけど、私オーバルカットにあまりときめかないという特性があるので、できれば他の形の子がいい」
蛙が肩にのっかってきたまま、なんとか人だかりをかきわけ、階段を恐る恐る降りていくと、次々に飛び込んでくるのは婚カツ情報だ。
「この前、ミッドナイトブルーサファイアをお迎えできることになった王太子が居たな」
みんな、婚約者のことを宝石で呼んでいるみたいだ。強制恋愛条例が招いたまず1つがこの、恋愛オークションではなく立場のあるものから順に、品定めした嫁をもらうという儀式。
そうだ、それだよ……それなんだ。
復讐に捕らわれた俺が、観察屋をすることになった理由。
あの子が……あの子が…………ガラスのやつに……………………
いや、そんなことよりも。
恋愛が強制でなかったなら、もしかしたらあの子はまだ──
はっ、と目を覚ますと知らない家だった。
ごちゃごちゃと棚に積まれた雑貨。
裸電球風のライト。
それから…………知らない少女が二人。
俺はその家の床に寝ていた。
「大丈夫?」
幼い女の子の隣にいる彼女が訪ねる。
「ここは」
「私の家」