青の先で、きみを待つ。
手すりを乗り越えて、身を乗り出した瞬間のことは覚えていない。
でも、私はこれで終わりにできると思った。
嫌なことも悲しいことも許せないことも、全部全部、捨てられると思っていた。
「隠してたわけじゃない。言う必要がなかったから言わなかっただけだ」
だから蒼井はなんで屋上から落ちたのか聞いても口を濁すだけだったんだ。
落ちたんじゃない。
私は自分で落ちることを選んだのだ。
「お願い、聞かせて。なんで蒼井も私と一緒に屋上から落ちたの?」
「………」
「いい加減、答えてくれてもいいでしょ?」
嘘や誤魔化しはもういらない。私はただ真実が知りたいだけ。
蒼井は深いため息をついたあと、髪の毛を掻いた。私の強い瞳に観念したように、ゆっくりと唇を動かしてくれた。
「お前のことを助けようとしたんだよ」
心が、ざわっとした。
覚えてないはずなのに、落下してる時に、大きな手が伸びてきて誰かに包まれたような、そんな感触だけは肌が記憶してる気がした。
「た、助けようとしたって、なんで……?」
だって、私たちは同級生という名の他人だった。話したこともなければ、名前すら知らないくらいの、遠い関係だったはずだ。
「昼寝をしようと思って、たまたま屋上にいたらお前が来た。んで、周りなんて一切見ずに手すりを越えた。やばいと思った時にはお前の体が前のめりになってた。だから、とっさに手を伸ばした。ただ、それだけのことだ」
蒼井はまるで普通のことを言うような態度で淡々としていた。