青の先で、きみを待つ。
橋本さんは手で穴を塞ぎながら、種を植えた場所へと丁寧に水をかけていた。
「来月の終わり頃には、綺麗な花が咲いてるといいんだけど」
彼女はそう言って、にこりとした。橋本さんは少しだけ明るくなった。こうして花を育てることにやりがいを感じているからかもしれない。
「……その後はどう?」
「長谷川さんたちのこと? 昨日は靴箱が壊されたりしてたけど、前に比べたら落ち着いてきた感じがする。紺野さんのおかげだね」
「な、なんで?」
「やっぱり少なからずあのアンケート用紙のことを長谷川さんも気にしてるんだと思う。紺野さんが先生に相談してくれなかったら、私は今もひどいことをされ続けてたよ」
私がしたことで、少しずつ現状がいい方向に向かっているのなら嬉しいことだ。
でも、考えてしまう。
もしもっと早く記憶が戻っていて、私のことをいじめていたのが、まりえだとわかっていたなら、私は橋本さんを助けようとしたんだろうかと。
「橋本さん。こんなこと聞くのは失恋だけど、いじめられて毎日辛かった?」
「辛いよ。こうしてなにかをしてないと気が紛れないし、学校に来ると必ずお腹が痛くなる」
……わかるよ。私もそうだった。
無理やり詰め込んだ朝食のパンを何度も吐きそうになって、病気じゃないのにずっと体調が悪かった。
こんなことは聞くべきじゃない。けれど、どうしても私は彼女に尋ねないといけないことがある。
「死にたいって思った?」
ごめんね。でも聞かせて。
私は死にたかった。そしてそれを選んでしまった。
「うん。今も思ってる。そうしたほうが楽なんじゃないかって」
ドクンと脈が大きく波打った。