青の先で、きみを待つ。
私はまりえにいじめられながら、何度も何度も思ってた。
だから、同じ目に遭えばいいって。同じように苦しめばいいって。同じようにいじめられたら、きっとこの苦しさがわかるのにって、そう思っていた。
私が望むこと、私がしたいことを叶えてくれる世界なら、橋本まりえがいじめられることを願ったのは私。
だけど橋本さんが苦しんでいるのを見て気分が晴れたかと聞かれたらそうじゃない。
同じ気持ち、同じ絶望を味わったかもしれないけれど、私は全然いい気持ちになれない。
「ごめん、橋本さん……ごめん」
私のせいで、ごめんなさい。でも自分が望んだ結果だとしても、私は彼女に死を選んでほしくないし、いじめに負けないでと思ってしまう。
私にとってこの世界も現実と同じようにリアルだし、ここにいる人たちのことも、偽物だからと割りきることはできない。
「……紺野さんも、なにか辛いことがあったの?」
橋本さんが心配そうな顔をしていた。その丸い瞳の中に私の姿が映っている。
「あったよ。数えきれないほど」
「じゃあ、私たちは一緒だね」
「うん」
「デイジーの花言葉はもうひとつあって、それは〝あなたと同じ気持ちです〟なんだよ。だからお互いに花が咲く頃には前を向けているといいね」
じんわりと、彼女の優しさで視界が滲んでいく。
私を傷つけたまりえと、私の傷を癒そうとしてくれる橋本さん。
どれが本物か、なんて今はどうでもいい。
私も、傷ついた橋本さんの傷を癒したい。
バカだと言われても、お人好しだと思われても、それが私の今の気持ちだった。