青の先で、きみを待つ。



「ってかさ、警察とか呼ばなくても、すでに犯人とかわかるよね!」

みんなに届く声で、沙織が発言をしてた。

「だよね! やっぱりあいつしかいないし」

「え? 誰のこと?」

クラスメイトがどっと騒ぎ始める。沙織はこういう時、自分の発言力を利用して、(こと)を大きくしたがる癖がある。みんなが興味津々に乗ってくる様子が楽しくて仕方ないんだろう。

「犯人は一組の蒼井翔也に決まってんじゃん!」

沙織の声に、思わず椅子から転げ落ちそうになった。

……え、蒼井が? なんで?

「だって去年の盗難と落書きって蒼井が犯人だったでしょ。今回も同じ手口だし絶対にあいつだよ」

「まじで? でも犯人ってあんま公になってないよね?」

「あー、なんか誰かが口止めしたらしいよ。あいつって裏でヤバいことをしてるって聞くし、そういうのに顔が利くんじゃないの?」

沙織が淡々と熱弁していて、みんなそれを食い入るように聞いていた。

ま、待って。まだ詳しいことはわからないけれど、今回のことは彼ではない。

だって被害が確認されていたという昨日の放課後に私は蒼井と一緒にいた。保健室から付き添ってくれていたから、彼が犯人なんてありえない。

でも沙織の発言力は強く、蒼井が犯人だという話が生徒たちの耳に広まるまで、そんなに時間はかからなかった。


「去年の事件の犯人もあいつなんだって」

「そういえば自宅謹慎になってた時もあったよね?」

あっちでもこっちでも蒼井のことばかりを話している。彼の名前が出るたびに私はイライラしていた。

【どこにいるの?】

さっきから蒼井に連絡しても返事すら来ない。仕方ないので彼がいそうな場所を手当たり次第に探した。そして最後に向かったのは……。


「もう、やっぱりここにいた!」

それは屋上だった。私の苦労も知らずに、蒼井はあぐらをかいて空を見上げている。


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