青の先で、きみを待つ。
「なんだよ、うるせーな」
「うるさくない。なんでメッセージ送ったのに返してくれないの?」
「お前って俺の彼女だっけ」
「か、か、彼女!?」
威勢よくここまで来たというのに、私は蒼井の言葉に動揺していた。ひとまず咳払いをして、気持ちを整える。
私が彼のことを探していたのは言うまでもなく、落書きや盗難のことについてだ。
「あんたが犯人ってことになってるけどいいの?」
「あー、そうらしいな」
「いや、否定しなよ。じゃないと、本当に犯人にされちゃうよ」
「どうでもいいし」
「はい?」
私はこんなにも腹をたてているし、モヤモヤしているというのに、彼は驚くほど無関心だった。
「言っとくけど、まじで言いたい放題にされてるからね」
ありもしないことを並べた挙げ句に、落書きをしたスプレーは万引きしたものだとか、財布を盗んでいる現場を目撃した人がいるとか、実は暴走族のリーダーだとか、とにかく色んな噂が飛び交っている。
「だからどうでもいいって」
その態度に私はムッとしていた。
「じゃあ、去年の事件のことは? あの時の犯人って蒼井だったの?」
問題を起こして謹慎処分を受けたことは知っていた。まさか、こんな形で理由を知ることになるとは思っていなかったけれど。
「うぜえから詮索すんなよ」
「詮索じゃない。事実かどうかを聞いてるだけ」
「そうやって言われてんなら、それでいいよ」
「……なにそれ」
「どうでもいいって、言ってんの」
「……わかった。もういい」
これ以上話しても仕方ない。私は呆れてしまって、そのまま屋上を出た。