青の先で、きみを待つ。



「……あの、」

気づくと私は声をかけていた。自分でも無謀だと思うけれど、今さら後には引けない。

「ん? なになに? 俺らになんか用?」

「ってか東高の制服じゃん。保坂(ほさか)の後輩じゃね?」

……保坂? 知らない。学校の卒業生だろうか。

「そ、その財布って……」

まだ決めつけてはいけないかもしれないけれど、これだけの証拠が揃っている限り、逃がしてはいけないと思った。

「あーこれ俺らの」

「なに、もしかして欲しいの?」

「俺たちのことをを楽しませてくれるならあげてもいいよ」

へらへらしてて、気持ち悪い。あの事件のせいでどれだけの人が困ったと思っているの?

しかも高校生の財布を盗んで、おまけにあんな落書きまでして、本当に信じられない。

「もし犯人なら警察に行ってください」

「は?」

男たちの目つきが変わった。近くに人はいるけれど、巻き込まれないように、ほとんどの人が知らん顔をしている。

「いきなり人のことを犯人呼ばわりとかひどくない?」

「もしかして俺らなめられてる?」

「あんまり俺らのことを怒らせないほうがいいよ」

私はあっという間に男たちに囲まれた。

しっかりと考えれば予測できた展開だ。でも、なにがなんでも真犯人を見つけたかった。

これは正義感でもなんでもない。

私が、蒼井のことを犯人扱いされることが許せなかっただけだ。

俺たちの手が私へと伸びてきた。その瞬間に……。

「おい、なにやってんだよ!」

その声と同時に、私は大きな背中に守られた。

ドクンと心臓が大きく跳ねる。顔は見えないけれど、すぐにそれが蒼井だとわかった。


< 126 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop