青の先で、きみを待つ。
「……あの、」
気づくと私は声をかけていた。自分でも無謀だと思うけれど、今さら後には引けない。
「ん? なになに? 俺らになんか用?」
「ってか東高の制服じゃん。保坂の後輩じゃね?」
……保坂? 知らない。学校の卒業生だろうか。
「そ、その財布って……」
まだ決めつけてはいけないかもしれないけれど、これだけの証拠が揃っている限り、逃がしてはいけないと思った。
「あーこれ俺らの」
「なに、もしかして欲しいの?」
「俺たちのことをを楽しませてくれるならあげてもいいよ」
へらへらしてて、気持ち悪い。あの事件のせいでどれだけの人が困ったと思っているの?
しかも高校生の財布を盗んで、おまけにあんな落書きまでして、本当に信じられない。
「もし犯人なら警察に行ってください」
「は?」
男たちの目つきが変わった。近くに人はいるけれど、巻き込まれないように、ほとんどの人が知らん顔をしている。
「いきなり人のことを犯人呼ばわりとかひどくない?」
「もしかして俺らなめられてる?」
「あんまり俺らのことを怒らせないほうがいいよ」
私はあっという間に男たちに囲まれた。
しっかりと考えれば予測できた展開だ。でも、なにがなんでも真犯人を見つけたかった。
これは正義感でもなんでもない。
私が、蒼井のことを犯人扱いされることが許せなかっただけだ。
俺たちの手が私へと伸びてきた。その瞬間に……。
「おい、なにやってんだよ!」
その声と同時に、私は大きな背中に守られた。
ドクンと心臓が大きく跳ねる。顔は見えないけれど、すぐにそれが蒼井だとわかった。