青の先で、きみを待つ。
「う、羨ましい? 僕が?」
「そうだよ。あんたはたくさん努力をしてるのに、蒼井はなにもしなくても恵まれ環境がある。そんな彼に嫉妬してたんでしょ?」
「ま、まさか。はは。なんで僕があんなやつのことを……」
「さっきは話したこともないって言ってたのに?」
「そ、それは……」
保坂の軽口が止まった。やり取りを見ていた人たちも顔を見合わせて困惑している。本人もそれに気づいてマズイと思ったのか今度は私のことを責め始めた。
「きみの言ってることは全部おかしいよ。公衆の面前で僕を犯人にしようとするなんて、一体なにが目的なの? どうせ目立ちたいとか下らない理由でしょ? こんなの名誉毀損もいいところだよ。きみこそ警察に行ったほうがいいんじゃないの?」
悔しさと手に力を入れていると、誰に肩を叩かれた。
「あーうるせえ。ペラペラと下らないことを言ってんのはお前だろ?」
蒼井の声を聞いた瞬間、泣きそうになった。彼が現れたことで、保坂はひどく取り乱している。
「せ、先生、こいつが事件の犯人なんですよね? だったら早く警察に突き出さないと!」
「保坂くん、落ち着いて」
「こういうバカは本当になにをするかわかんないんですよ? 刃物とか持ってるかもしれないし、もっと大きな事件を起こすかもしれな……」
保坂の言葉を待たずに、蒼井がグイッと襟を掴んだ。
「ほらね。すぐこうして暴力を振るおうとするでしょ?」
保坂は蒼井と目を合わせずに周りの人たちに訴えている。その姿が私には悪あがきに見えていた。すると蒼井はやっと口を開いて、なぜかニヤリと笑った。