青の先で、きみを待つ。
「お前、本当に変わったよな」
「そう、かな?」
前ほどうつ向く回数は減ったかもしれないけれど、いまだに教室に長くいられないし、こうして昼食も離れた場所で食べているので、弱虫な自分はまだいると思う。
「とりあえず、俺はここで昼寝するから、お前は真面目に授業受けとけ」
スマホの時計を見ると、あと五分で予鈴が鳴ろうとしていた。
「え、ズルい。私も……って、嘘でしょ。もう寝てるの?」
彼は太陽を浴びて気持ち良さそうに目を瞑ってる。こんなに寝落ちが早い人は蒼井くらいだと思う。
もう、とため息をつきながらも、彼を起こさないように、そっと立ち上がる。屋上のドアを静かに閉めて、階段を下りていると……。
「……あれ?」
突然、視界がぼやけてきた。まるで船酔いのようにグラグラと揺れていて、私は思わず手すりを掴む。
立ちくらみだろうかと、不思議に思っていると、自分の手が半透明になっていることに気づいた。
「……ひっ、なにこれ」
それは手だけじゃない。上履きを履いている足先も透けている。
恐怖を感じて動けなくなっていると、次第に透明さが消えていき、数秒後には元に戻っていた。
……なに、今の?
怖くて蒼井の元に行こうと思ったけれど、伸ばした手は屋上のドアノブに触れることなく止まる。
ただの目の錯覚かもしれないし、大袈裟に騒ぐことじゃない。
そう言い聞かせて、教室へ向かった。