青の先で、きみを待つ。
初めて心を許せて、相手も許してくれてると思っていて。こんなことを言えば嘘に聞こえるかもしれないけれど、大人になっても友達でいられたらいいなと思うほど大切な人だった。
けれど私たちは修復ができないほど遠い存在になってしまった。
「それって……私の知ってる人?」
嘘はつかない。誤魔化したりもしない。でも私は静かに首を横に振った。
「ううん。橋本さんは知らない。それでいて橋本さんとは真逆の人だよ」
それを言ったら、ほろりと一筋の涙が流れた。
橋本さんは〝まりえ〟だけど全然違う。
私が作り出した幻だとしても、そうだったらいいと夢見ていたことが詰まっている世界だとしても、私が出逢った橋本さんに同じ人はいない。
すると、彼女はポケットからなにかを取り出した。
「はい」
それは小花柄のハンカチだった。
「洗ってあるから綺麗だよ。使って」
それは、私が橋本さんのことを助けた時にかけた言葉と同じだった。
「紺野さんは前にハンカチを貸してくれたでしょ? だから今度は私が貸してあげる。もし必要じゃなくなったら、その時に返してくれればいいから」
そのハンカチは偶然にも私と色違いのものだ。
一緒に買い物に行ったり、おそろいの物を選んだり、そういう楽しい時間を橋本さんとも過ごしたかった。
そしたらもっと仲良くなれたんじゃないかと思うけれど、きっと私たちは同じ世界線にはいられない存在だ。
「ハンカチありがとう。いつか必ず返すからね」
寂しいけれど、止まっていたはずの時間がゆっくりと確実に動いている感覚が、心の奥でしていた。