青の先で、きみを待つ。
日が沈んで涼しくなってきた頃、私は蒼井を公園に呼び出した。
「……え、なにこれ」
「逆になにに見えるの?」
私が渡したのは先ほど焼いたクッキーだった。決してお母さんにあんなことを言われたからじゃない。
張り切りすぎて作りすぎてしまったし、余らせるのはもったいないと思っただけだ。
「べつにいらないならいいよ」
「いらないとは言ってねーし」
蒼井はお腹が空いていたのかすぐに袋から一枚のクッキーを取り出して食べていた。
「……味はどう?」
「旨いよ、普通に。でもこのブタのセンスはどうかと思うけどな」
「それブタじゃなくてネコだから」
「お前って絵も下手くそなの?」
「うっさい」
空を見上げると、綺麗な星空が浮かんでいる。こうして息を吸って季節の香りを嗅いでいると、ここが現実ではないと忘れそうになる。
「最近さ、体が変っていうか……おかしなこととかって起きたりしてない?」
「どんなこと?」
「か、体が透けるみたいな……」
「寝ぼけてんの?」
「寝ぼけてないっ!」
つまり、彼に同じ現象は起きていないということだ。あの時、確実に私の体は透けていた。あれからずっと胸がざわざわとして落ち着かない。