青の先で、きみを待つ。
「透けるって、どんなふうに?」
「わかんないけど、自分がだんだんと透明になっていくようか感覚だった」
だから怖かった。
もし、透明人間になったら、私は誰の目にも映らない。蒼井にすら認識されない存在になるということだ。
「それって……透けてるんじゃなくて、消えかけてるんじゃねーの?」
「え?」
消え……かけてる? 私が?
「ど、どういうこと?」
消えるって私の存在がってこと?
それともこの世界ごとってこと?
急な展開すぎて頭が回らない。
「向こうのお前が呼んでるんじゃね?」
今サラリとすごいことを言われた気がする。
「向こうって……元の世界のことだよね?」
「消えかけてるってことはそういう可能性もあるんじゃねーのって話だけど」
「じゃあ、呼ばれてる私はやっぱり生きてるってこと……?」
言いながら、心臓の鼓動が速くなっていた。現実世界の自分の生死についてはいまだに不確かで、どうなっているのかわからない。
死を自ら選んだとはいえ、本当に死んでいるとなれば恐怖心はある。でも、生きているかもしれないと言われても、私は素直に喜べない。
だって、そうなれば、私はいつか元の世界に戻るということだ。
そこはなにひとつ変わっていない、苦しくて辛くて冷たい場所だから。
「あくまで可能性の話だよ。んで、消えかけていない俺は死んでるってことなのかもしれないし」
そう言って蒼井は両手を空へと掲げて、大きく屈伸をしていた。