青の先で、きみを待つ。
「俺はお前に助けてなんて頼まれてないよ。飛び降りる勇気なんてねーだろって鼻で笑ってたらまじでやるもんだから、条件反射で体が動いたってだけの話だ」
でも、巻き込んでしまったことは変えようのない事実だ。
関わりなんてなかった蒼井が私のために死んでしまったとしたら、償っても償いきれない。
助けなんて、いらなかった。ひとりで飛び降りて、ひとりで死んでいけばそれでよかったのに、どうして……。
「お願いだから責めてよ。お前のせいだっていつもみたいに嫌味のひとつでも言いなよ」
じゃないと、私の気が済まない。すると彼は静かに近づいてきて、私の頭に手を置いた。
「俺がしたいからした。お前だって俺のことを大勢の前で庇った時はそうしたいからしてくれたんじゃねーの?」
「そ、それは……」
「俺は自分がしたことに後悔はしない」
「じゃあ、私を助けようとしたことに後悔はないの? それで死んでしまったとしても? 蒼井の人生が終わりになったとしてもそれでいいの?」
「お前のためならいいよ」
ああ、もう本当に嫌だ。
お前なんて助けなきゃよかったって言ってほしかった。そしたら私もそのとおりだよって言える。
でもそんなに堂々と肯定されたら……私のせいなんて、二度と言えない。
私のために命を擲ってでも助けてくれた人がいる。
お前のためならって、言ってくれる人がいる。
あの日の自分に、そんな人が世の中にはいるよって伝えてあげたい。
案外それは傍にいたよって、教えてあげたい。
そしたら私は屋上に向かったとしても、足を前には出さずに、もう少し生きてみようと踏ん張れたかもしれないと、そんなことを思った。