青の先で、きみを待つ。
「沙織、いじめなんてもうやめようよ」
「ってか、沙織とか慣れ慣れしく呼ばないで。もうあかりはそっち側の人間なんだから気安く話しかけないでね。みんなにも言っとくから」
これは明日から私のことは無視しろという合図だ。それどころか教室のドアを開けた瞬間から、私はきっとゴミ以下の扱いをされることだろう。
「沙織は自分のことが苦手な人がいても仲良くしたいって前に言ってたじゃん。あれは嘘なの?」
「嘘じゃないよ」
「……じゃあ」
「私のことが嫌いなのは許せるけど、私が嫌いなやつと仲良くするのは許せない。これは裏切りだよ。あかり」
沙織がジリジリと詰め寄ってくる。そして凶器のような目で私のことを見下ろした。
「どうせいじめのことを濱田にチクったのもお前だろ」
蒼井が言う〝お前〟とはまったく温度が違う。まるで名前すら呼ぶ価値がないと言われてるみたいだ。
なんで誰かを蹴落としたり、誰かを傷つけないと、自分自身が満たされない人たちがいるんだろうか。
どこへ行ってもいじめはなくならない。いじめを終わらせる方法なんて、どこにも存在しないのかもしれない。
「じゃ、私のことも明日から無視していいよ」
……と、その時。静寂を切るようにして、私と沙織以外の声が響いた。
視線がその人へと集中する。
それは、私のことを庇う美保の姿だった。