青の先で、きみを待つ。
週末になって、美保と駅で待ち合わせをした。
「あかり、こっちこっち!」
迎えにきてくれた美保はすごくラフな格好だった。一方の私はあれこれと詰め込んだ結果、かなりの大荷物になっていた。
「一週間くらい泊まる気なの?」と冗談で言う美保は以前となにも変わらずに、私たちのわだかまりもすっかり消えていた。
「お邪魔します」
美保の家は閑静な住宅街にあった。玄関には地方の置物がたくさん並んであり、ご両親は普段から旅行が趣味のようだ。
「ここが私の部屋だよ。今飲み物とってくるから座って待っててね」
美保の部屋は、爽やかなアロマの匂いに包まれていた。ガラスボックスには可愛らしい小物も収納されている。
「あかりって、ピーチティー飲めるよね?」
「うん、飲めるよ」
「温かいので平気?」
「ホットのほうが好き」
「はは、私も」
ポットとティーカップがテーブルに置かれると、私たちはピーチティーを飲みながら、アルバムを開いていた。
「この写真、懐かしくない?」
美保が見せてきたのは、クラス替えしたばかりの私たちだ。
「これって私が声をかけた次の日にカラオケに行った写真なんだよ。ふたりとも今と髪型違うし、なんかぎこちないよね」
まだお互いに名字で呼び合っていたので、ツーショットとはいえ、まだ距離があるのがわかる。
もちろん私もその時の記憶はあるけれど、四月といえば私はまだ現実世界にいた。だから、ここに来る前の記憶やみんなの中にいる私は作り物ということになる。
だけど最近ふっと思う。
本当はこの世界にもうひとりの私がいて普通に生活したり学校にも行って。幼い時の写真やみんなが知っている私はその人なんじゃないかって。
それで今の私がここに来てしまったから、その人は消えてしまったんじゃないかと、そんな都合のいい仮説を考えたりする。
私はきっと、美保が懐かしそうに話す私のことを偽物だと思いたくないのかもしれない。