青の先で、きみを待つ。



「次からは安いビニール傘にしたほうがいいよ。色が付いた傘って、ただでさえ印象が強く残りやすいからさ」

だから私も学校ではビニール傘しか使わない。

……そういえば本当に私の可愛い傘はどこに行ったんだろう? 帰ったらお母さんに聞いてみよう。


「傘がないと帰れない……」

橋本さんが泣きそうな顔をしていた。

彼女がどうしていじめの対象になっているのかはわからない。けれど、はっきりとしたことなんてないのかもしれない。

〝大人しいから〟〝地味だから〟〝なんとなく気にくわない〟そんな理不尽な理由で成立してしまうのが、いじめだ。

みんな自分じゃなきゃ、関係ないって思ってる。いじめのターゲットなんて気分次第で変わるものだし、橋本さんへの嫌がらせも永遠に続くわけじゃない。

みんな、明日は我が身。でも、そうならないための(すべ)をそれぞれが身につけていて、それを持っていないと橋本さんみたいに目をつけられる。

正直、私は上手く立ち回ってるほうだし、橋本さんをいじめてる人たちとも仲がいいほうだから彼女側になることはないと思う。

「……傘、貸そうか?」

でも、いじめはいけないことという認識は強くある。

橋本さんのことを可哀想だと思っているし、いじめなんて早くなくなればいいと考えている。

でも、それを口に出すことも実行することもない。

心では哀れんでいても、やっぱり私はそっち側の人間にはなりたくないとも思ってる。

今だって誰もいないから話しかけてるけれど、きっと人の目があったら、私は教室のように知らん顔をしてた。


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