青の先で、きみを待つ。



「でも私に貸したら紺野さんが……」

「うーん。まあ、走って帰れない距離でもないし? それか教室に置きっぱなしになってる傘とか使っちゃえば? どうせ誰のかわからないんだし」

「……だけど勝手に使ったら困る人がいるかもしれないし、職員室に行って聞いてみようかな」

勝手に持っていかれたのにまだ人のことを気にするなんて、橋本さんは優しい子なんだと思う。でもきっと、この優しさで損をしてることがたくさんあると思う。

職員室に傘があるか聞く前にいじめのことを相談したほうがいいと思うけれど、それはさすがに余計なお世話だ。

「そうだね。折り畳み傘とか余分に持ってる先生もいそうだし、あるといいね」

そういえば私ものんびりしてる場合じゃなかった。保健室の先生は帰るのが早いし、鍵を閉められていなければいいけど……。

「紺野さん、ありがとう」

立ち去る前に、橋本さんにお礼を言われた。


心が綺麗でいい子ほど、心が汚くて悪い子の餌食になる。

なんとかしてあげたいけど、ごめん。

私にはいじめをなくす力はない。


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