青の先で、きみを待つ。

保健室に着くと先生はいなかったけれど、鍵は開いていた。

この消毒液の匂いと虫歯予防のリアルなポスターは嫌いではないけど、静まり返ってるせいかちょっと不気味に感じてしまう。

外の雨は激しくなるばかりで、窓に打ち付けている水力も増えていた。用事を済ませて早く帰ろうと、スマホを置いた棚を確かめる。

でも、そこにスマホはなかった。あれから時間が経っているし、先生が預かってくれているのかな。そうじゃなきゃ困るけど……。

誰かに持っていかれていないことを祈りながら職員室に向かおうとすると、まるで悪夢みたいに声が聞こえた。


「来るのがおせーんだよ。タコ」

まさかと思いながら、振り向く。

ホラー映画のように部屋の隅に立っていたのは、蒼井翔也だった。


「な、な、なんでまたいるの？」

「また？　昼休みからずっとここにいるけど」

それもそれで怖い。保健室の先生はなにも言わないんだろうか……。

「これ、取りに来たんだろ？」

そう言って見せてきたのは、紛れもない私のスマホだった。

「なんであんたが持ってるの？」

「いや置いて行ったのお前じゃん。つーか普通もっと早く気づくだろ。元々そんなにどんくさい性格なの？」

そうだ。彼は口を開くだけで私に嫌なことを言ってくる人だった。私はもうこの人とは関わらない。いや、関わりたくない。

「私のスマホ返して」

「返して？　じゃ取りにこいよ」

「………」

「いいの？　投げるよ？」

優しく投げて……はくれないだろう。あんまり近づきたくないけれど、買ったばかりのスマホを傷つけたくないと、足を進ませた。