青の先で、きみを待つ。
……あともう少し。
差し出されているスマホに手が触れる寸前、私は強引に腕を掴まれた。まるで一気に距離を詰めるかのようにそのまま彼のほうに引き寄せられてしまい、気づくと蒼井の顔が至近距離にあった。
「俺のこと怖いの?」
見つめられている瞳がまん丸でビー玉みたいだと思った。怖い、怖いけれど、それ以上に蒼井の顔が綺麗で、私はゴクリと息を呑む。
「わからないから怖いんだろ?」
頭のおかしい人だと思っていたけれど、とても冷静に的を得たことを言われて戸惑っている。
たしかに私は蒼井の言ってることも、考えてることも、その瞳で私のなにを探ろうとしているのかも、わからない。
わからないから、怖い。
だから本当は避けるんじゃなくて、彼に聞きたいことがいっぱい頭に浮かんでいる。
「……なんで早く思い出せとか気づけとか、意味わかんないことばっか言うの? それに私が死んだなんて……冗談でも言ってほしくない」
「冗談じゃない。俺は本当のことしか言わない」
「そんなの、信じられない。だって私はあんたのことなんて全然なんにも知らない」
蒼井翔也は同級生で、一組で、目つきが悪い。今私の中でそのたった三つの情報だけで彼は成り立っている。
「俺もわからないから知りたい。なんでここにいるのか、この状況はなんなのか」
「この状況……?」
「早く思い出せ。紺野あかり。ここは俺たちがいた世界じゃない。多分ここは……」
私は続きの言葉を待った。けれど、蒼井の声はそこで終わった。
俺たちがいた世界じゃない?
多分ここは……なに?
ああ、また頭が痛くなってきた。
しばらくしたら落ち着くはずの疼きは今日に限って長く激しく、眩暈がするまで治まらなかった。