青の先で、きみを待つ。





あれから数日が経っていた。あの雨が嘘だったかのように連日晴天が続いていて、朝の目覚めも快適だ。

「おはよう。目玉焼き半熟でいいよね?」

テーブルには焼きたてのトーストといちごジャムが置かれていた。お母さんは朝から鼻唄を歌うほどの上機嫌で、珍しくお父さんの姿もある。

「あかり、おはよう。温かい内に早く食べなさい」

お父さんはブラックコーヒーを飲みながら、新聞に目を通していた。

「うん。おはよう。お父さん、今日仕事は?」

「今日は遅めの出社でも大丈夫なんだ」

「そうなんだ」

「学校はどうだ? 楽しいか?」

お父さんと食卓が一緒になる時には、決まってこの質問をされる。心配性のお父さんは私の学校のことを色々と聞きたいみたいだ。

「楽しいよ。友達もたくさんいるしね」

「あかりは可愛いから人気者だろう?」

「あのね、お父さんは私のことを過大評価しすぎなの。私の顔面偏差値なんて真ん中より下だから」

「お父さんにとっては世界で一番あかりが可愛いよ」

「はいはい、わかってる」

そんな私たちのやり取りをお母さんが微笑ましく見ていた。まるでホームドラマの一場面を切り取ったような光景は私にとって一番幸せを感じる瞬間でもある。

私が両親と仲がいいように、お母さんとお父さんもずっと新婚みたいな雰囲気で、結婚指輪だって一度も外したことがないらしい。

気づけば箸やマグカップがおそろいだったりするし、二十年一緒にいるとは思えないくらいだ。

私にとっては当たり前の日常だけれど、他の家では違うようで友達に話すと驚かれたりもする。

穏やかで幸せな空間のはずなのに、私の脳裏では蒼井の顔がちらついていた。

――多分ここは……。

肝心なところを言わないなんて、反則でしょ。

気にしたくないのに気になるし、中途半端なのが一番モヤモヤする。


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