青の先で、きみを待つ。
マラソンは学校の周りを走ることになった。距離にすると約三キロちょっとあるらしい。体育の先生はみんなの後を自転車で追いながら声がけをしている。
一方の私は最後尾をのろのろと走りつつ、すでにバテていた。
始まる前は文句をたれていたクラスメイトたちもなんだかんだ楽しそうにしてるし、こんなに必死になってるのは自分だけなんじゃないかと錯覚しそうになる。
息を切らせながら前方を見ると、美保の姿が遥か遠くにいた。
「ハア……美保、速すぎ」
頑張って追いつこうとスピードを上げようとした瞬間、踏切の近くで誰かがうずくまっていた。
「橋本……さん?」
彼女は私の声に反応するようにして、視線を上げた。その顔色は青というより白に近かった。
「ど、どうしたの? 大丈夫?」
「うん。ちょっと目眩がしちゃって……」
辺りを見渡しても人がいない。頼りになるはずの先生の自転車は先頭集団の側にあり、これだけ距離が開いていたら、おそらく大声を出しても届かないだろう。
「朝ごはんは食べてきた?」
「今日はまだなにも……」
「ちょっとだけ立てる? あの木陰に移動したほうがいいかも」
橋本さんに手を貸そうとした時、同じジャージを着た人たちが私たちに近寄ってきた。
「あれれ? なにしてんの?」
それは橋本さんのことをいじめている女子三人組だった。
走るのダルいから歩くって言ってたのを聞いたけれど、まさか私より後方にいたなんて気づかなかった。