青の先で、きみを待つ。
「つーか橋本じゃん。なになに、気持ち悪いの?」
その表情は心配というより、面白がっていた。
「どうせ仮病でしょ? あかりもさ、そいつに触らないほうがいいって。菌とか移りそうだし」
あははと高笑いが響く。
そういえば教室でもばい菌扱いしてるのを見たことがある。橋本さんがなにかしたわけじゃないのに、なんでここまでするのかな……。
「ってか、あかりってそいつと親しいの?」
女子のリーダー格でもある長谷川沙織に質問された。
沙織はスクールカーストで表すと一軍にいて、その目立つ容姿と権力から学年でも一目置かれている存在だ。
沙織に嫌われたら、学校生活は終わり。
これは教科書に載っていなくても、女子ならばみんな留意してることだ。
沙織の視線が怖い。べつに私が誰と親しくしようと自由だけど、きっと橋本さんと仲良くしたら私は沙織の敵になるんだろう。
平穏で楽しい生活を壊されるのは嫌だ。今が一番充実しているというのに、波風なんて立てたくない。
「う、ううん! 親しいわけじゃないけど、たまたま通りかかったからさ」
私は橋本さんより自分がいじめられない選択をした。
「だよねー。じゃあ、一緒にゴールまで行こうよ!」
沙織に肩を組まれる。私は笑っていた。ここで少しでも表情を崩せば、橋本さんのことを気にかけていることを見抜かれてしまうから。
「うん、行こう、行こう」
心で何度も謝りながら、私は橋本さんをそのまま置き去りにした。