青の先で、きみを待つ。
「はあ……」
私はため息を三回つく。あのまま踊り場に居続けるわけにもいかないと廊下に出てきたけれど、教室のドアをなかなか開けることができずにいた。
中からはいつもの騒がしい声が漏れていて、〝もしも〟のことを考えると胃が痛くなってくる。
どうしようか悩んでいると、内側から勢いよくドアが開いた。そこに立っていたのは、沙織だった。
「あ、え、えっと……」
なんにも武装をしないで、いきなりラスボスに出会ってしまったような気分だ。
沙織のことが怖くて目を合わせられないでいると……。
「あれ、あかりどうしたの? 遅刻?」
沙織は拍子抜けするほど、通常どおりだった。
「ホームルームの時にいなかったから心配してたんだよ。ねえ、みんな! あかりが来たよ!」
報告するように彼女がクラスメイトへと呼び掛けると、みんなから「おはよう」という言葉が飛んできた。
……あ、あれ、もしかしてなにもない?
ホッと胸を撫で下ろして、私は自分の席へと座る。美保に挨拶しようとしたけれど、すぐに古典の先生が来てしまったので叶わなかった。
急いで机から教科書を取り出している最中、橋本さんと目が合った。
彼女はニコリと笑って、小さく手を振ってくれていた。私は振り返すことができずに、ただ会釈だけをする。
……蒼井の言うとおりだ。
ちっぽけな正義感しか持ってないなら、中途半端に寄り添ってはいけない。
現に私はクラスメイトがいる前では橋本さんに対して手も振れないし、笑顔も作れない。
昨日のは、正義でもなんでもない。
ただの……自己満足だ。