青の先で、きみを待つ。



――『勝手にいなくなってくやつらなんて追いかけるなよ、バカ。そんなのお前から捨ててやれ』

そういえば、あいつすごいことを言ってたな。

あんなの彼しか言えないセリフだ。嫌われることも怖くないし、いつもひとりでいる蒼井はある意味無敵だと思う。

だからいつも自信満々なのかな。彼に弱い部分は存在しないんだろうか。

「あかり、ちょっといい?」

授業が終わって休み時間になると、美保に呼ばれた。教室では話せないことなのか、私たちは人目につかない階段下へと移動する。

「昨日のことなんだけど」

美保が険しい顔をしていた。いつもニコニコと明るい印象しかなかったから、こんな表情をする彼女を見たのは初めてだった。

「あんまりああいうことはしないほうがいいよ」

ああいうこととは、きっと橋本さんを差している。

「あかりは優しいから、橋本さんのことを放っておけないのかもしれないけど、沙織に目をつけられたらどうなるかわかるでしょ」

「……うん」

「あんなのはいつもどおりに知らん顔しておけばいいんだよ。私たちには関係ないんだしさ」

たしかにいじめを始めたのは沙織であり、いじめられている橋本さんとは友達じゃない。

だけど、関係ないってことはないと思う。

ゲームに参加したり橋本さんを笑ったり、沙織みたいに直接暴言を吐かなくても黙認している私たちはみんながいじめに加担してる人だ。

「私も今までは知らん顔をしてたけど、明らかに最近はやりすぎてるよ。橋本さんも可哀想だし、沙織だって加減が麻痺してる。このままいけば取り返しがつかないことになりかねない……」

「いいの。自分じゃなければ」

私の言葉を、美保はぴしゃりと遮った。


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