青の先で、きみを待つ。
「いじめられて同情はするけど、橋本さんと仲良くしたら次はあかりがいじめられるかもよ。それでもいいわけ?」
「私は……」
そのあとの言葉が出てこない。
「いいじゃん。今までどおり見て見ないふりで。私はあかりと友達だと思ってるし、普通に大事だよ。だから橋本さんとは関わらないで」
美保が私を呼び出して言いたかったのはきっとこれだ。
彼女は、私のことを心配してくれている。
でも、きっと私が沙織に目をつけられてしまえば……美保は私のことをあっさりと切ると思う。
「じゃあ、教室に戻ろう。大丈夫。昨日のことは誰にも言わないよ」
美保がいつもの顔に戻って私の手を引いた。その手が冷たく感じたのは、私の追いつかない気持ちがそう捉えたんだろう。
これでいいの?
私の中途半端な正義感がまた邪魔をしている。
……と、その時。激しい耳鳴りが襲われた。それと同時にまた頭の中で誰かの声がする。
――『ねえ、市川さんもあかりのことがうざいよね? 普通にキモいよね? だったらちゃんと言わないと』
『うざい、キモい』
『はは、ウケる! だよねだよね』
なんで? どうして?
なんで? なんで? なんで?
ねえ、私は――。
その声はすぐに消えた。いつも曖昧な情報ばかりだけれど、今回ははっきりと人の名前が聞き取れた。
……市川さん。間違いなく、そう言っていた。
私の知っている市川は、美保しかいない。
美保? あれは美保なの?
映像の中で見えた彼女は、黒髪で化粧もしてなくて、制服も一切気崩していなかった。それは、今とは逆の冴えない姿だった。
もしかして、美保も変わった人のひとりなの?
わからない。頭の整理が追いつかない。冷や汗とともに、血の気が静かに引いていた。