青の先で、きみを待つ。




私は一体、なにを忘れているんだろう。

なにか大事なことを思い出せそうなのに、思い出したくないと私の中の誰かが叫んでいる。

私のなくした記憶ってなに?

現実世界の私は、どんな生活をしていたの?

「おい。ボーッと突っ立ってんじゃねーよ」

通学路の途中で、誰かに押された。振り向くとそこには蒼井がいた。

「ったく。歩くのおせーし、走ってもおせーし。お前って本当に亀だな。亀」と、いつもの調子で文句を投げられる。

彼は指定された制服を着ずにパーカーを羽織っていた。よく見るとローファーも履いておらず、紐がだらりと緩められているスニーカーは、かなり履き潰されている。

そんな彼にあっさりと抜かれた私は、大きすぎる背中に視線を向けた。

どういうわけか、蒼井の顔を見たらホッとしてる自分がいる。

秘密ごとを共有してるからなのか。それとも悪態をつかれることにも慣れてきてしまったのか。

いや、それはさすがにない、歩くスピードを上げて、彼の横に並んだ。


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