青の先で、きみを待つ。



「ってか、あんたの家ってこっちだったの?」

「全然逆。昨日ネカフェに泊まってそのまま来たから」

ネットカフェ? もしかして駅前の?

たしかにあそこは漫画や食べ物が豊富にあって、寝泊まりに利用してる人はたくさんいるけど……。

「でも、そういうのって普通、次の日が休みの時に行くんじゃないの? 逆に疲れそう」

「疲れはしないけど、足伸ばせなかったから体が痛てえ」

「あー、あんたって無駄に背が高いもんね」

「お前はチビだよな。今時の中学生のほうが色気あんのに虚しくならない?」

「は? ならないし!」

「ぼっちになって暇なら後で肩くらい揉ませてやるよ」

「なってないから! まだ、その一応、うん。ひとりにはなってない」

「へえ、なら、よかったじゃん」

あれ、一応遠回しに心配してくれたのかな。

私は、美保の橋本さんと関わらないでという忠告を守っている。それによって、私の生活は守られた。

だから今もひとりにはなっていない。

でも、本当にこれでよかったんだろうかと考える。

前は学校が楽しくて仕方なかったけれど、今はちっとも楽しくない。

友達はいるし、私の日常は変わっていないというのに、前みたいに心から笑えなくなっていた。

「蒼井は最近変わったこととかないの?」

「ねぇな」

「私また変な声が頭の中で聞こえたよ。しかもすっごい嫌なことだった」

「どんな内容?」

「それは……言いたくない」

「お前、喧嘩売ってんの?」

「と、とにかく今は言いたくないのっ!」

自分で話を振っておきながら、私は身勝手なことを返す。蒼井は「なんだそれ」と言いながら、呆れていた。


< 60 / 198 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop