青の先で、きみを待つ。



机を見ると、先生に向けてタオルを勝手に借りたことと、洗って返すということが記されていた。

いい子すぎて、心が痛い。かなり濡れていたし、制服がなかなか乾かないことは私も知っている。

……ジャージぐらい貸してあげればよかっただろうか。でも誰もいないところで貸すのはやっぱり違う? 

わからない。わからないよ……。 


「……蒼井はああいうのどう思う?」

「なにが?」

「橋本さん。クラスメイトにいじめられてるの」

「ふーん」

「ふーんって。橋本さんと現実世界では知り合いなんでしょ?」

「知り合いじゃねーし。付き合ってほしいって言い寄られてただけ」

今の橋本さんからは想像もつかない。たしか彼の話では女子グループのリーダーだったって言ってたし、まるで今の沙織みたいだ。

「今朝は言えなかったけど、実は私の友達もね、多分変わった人のひとりみたいなんだよね」

私の記憶する中で見え隠れしていた美保は、まるで別人のようで、そっちのほうが偽物なんじゃないかと思うくらいだった。

最初は現実世界にいた時の自分の日常だとは思ってなくて、音声つきの映像が見えても、まるで映画を鑑賞してるような、そんな感覚がしてた。

でも、ただのフィクションなら、私の心はこんなにも乱れたりはしない。

認めたくない。

でも認めなきゃいけない。

認めてあげなきゃ、私はなにも変われない。


「ねえ、蒼井。私ってひょっとして、現実世界で……いじめられてた?」



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