青の先で、きみを待つ。
「あかり。今日の体育バスケだって。五組と合同だから早めに集合らしいよー」
「あーごめん。黒板消してから行くから美保は先に行ってていいよ」
「わかった!」
今日は月に一回順番が回ってくる日直の日だ。
真面目にやってる人なんてほとんどいないけれど、体育の次は口うるさい古典の授業だから、消しておかないと後で面倒なことになるのは目に見えている。
マラソンだと腰が重くなるクラスメイトたちもバスケだと違うようで、みんなそそくさとジャージに着替えて体育館へと移動を始めていた。
……バスケも苦手だな。っていうか私って、得意なことがそもそもないのかも、なんて考えながら、黒板を消していると、橋本さんが暗い表情で教室に入ってきた。
彼女はなにやら、右の手首を押さえている。よく見ると、そこには青アザができていた。
「そ、それ、どうしたの?…」
「ちょっと……」
「ちょっとって……。保健室には行った?」
確認のために少しだけ触れさせてもらうと、橋本さんは痛そうに顔を歪めていた。
「折れてはなさそうだけど、病院に行ったほうがいいと思う」
「平気だよ。変な転び方したら手首を捻っちゃっただけだから」
「沙織にやられたの?」
「え?」
「そうなんでしょ?」
その質問に、橋本さんは頷くことはしなかった。けれど、彼女の表情を見れば、自分の不注意で怪我をしたわけじゃないことはわかる。
いじめに大きいも小さいもないけれど、故意で怪我をさせたら、それは立派な犯罪だ。