青の先で、きみを待つ。
砂嵐が徐々に引いていく。「あかり?」と名前を呼ばれたと思えば、掃除機を手にしたお母さんが戻ってきていた。
「あらら、指切っちゃったの? あかりは拾わなくてよかったのに」
そう言ってお母さんは、私の手を触った。優しくて温かいお母さんの手。
でも、これは違う。
私の知っているお母さんではない。
「あかり、大丈夫……?」
思考がぐちゃぐちゃになっている。限界を越えてしまった私は、お母さんの手を払って家を飛び出していた。
部屋着のまま、無我夢中で、ただただ走り続けた。息を切らせてたどり着いたのは、近所の小さな公園だった。
小さい頃はここの滑り台が好きでよく遊びに来ていた。だけどその記憶も私が都合よく書き換えている偽物かもしれない。
料理が好きで掃除好きのお母さん。
心配症で家族を優先するお父さん。
喧嘩なんてしたことがなく、こっちが恥ずかしくなるほど仲良しなふたりは、実際にはいなかった。
そうなればいいと、そうだったらいいと、私が願った理想が今の両親の姿だったのだ。