青の先で、きみを待つ。
本当のお母さんは、あんなふうに私のことを心配したり、優しい笑顔を向けてくれる人ではなかった。
一切の家事を放棄してしまったお母さんに代わって、家のことは私がいつもしていた。
けれど、なにも教えてもらっていない私ができるはずもなくて、お腹が空けば安く箱買いをしてきたカップラーメンを消化していくだけ。
学校に行く前は焼いていない食パンを流れ作業のように口へと放り込み、『いってきます』と誰もいないのに言う。
忘れていた。忘れたかった。
でも、それが紛れもない私の日常だった。
「……っ……」
張りつめていた糸が切れてしまったように、涙がとまらない。
どうしよう、苦しくて仕方ない。
今のお母さんとお父さんも私が作り出したものだった。
こんなこと、相談できる友達もいない。こんな気持ちでは家にも帰れない。
震える手でスマホを取り出して、私は蒼井へと電話をかけていた。
今は無性に彼の声が聞きたい。じゃないと、この重みで自分が押し潰されてしまう。
『なんだよ』
電話はすぐに繋がった。飛んできた声はいつものようにぶっきらぼうだったけれど、私はひどく安心していた。
「……蒼井、助けて……っ、」
声を詰まらせながら訴えたところで、電話が切れた。耳から離したスマホの画面が真っ暗で、電源が切れてしまったのだとわかった。
……もう、最悪すぎる。
肩を落としつつ、電池切れになってしまったスマホがまるで自分のようだと思っていた。