淡雪のように、消えていった。
「陽の光があると、こんなにも輝けるんだね」

 彼がそう言うと、私は何も答えずに、ただ彼を見つめた。彼はじっとダイヤモンドダストを見つめていた。

その言葉は空気に混ざらずに、ずっと私の頭の中をこだました。

 私は前、ダイヤモンドダストを調べた時、陽の光がないと輝けないんじゃんって呟いていた。

 意味は同じだけど、考えがなんか違う気がした。

 帰り道、途中まで一緒に帰った。歩きながら、普段気にならない商店の屋根から伸びているつららをふと見た。凄く長くて、簡単には折れたりしないのだろうなと思った。

 彼は水野さんに振られたらしい。まだ今も忘れられずにいたりするのかな。

 もしそうだとしたら、彼女の事を忘れて、私にすればいいのに。ずっと好きでいられる自信もあるし、なんとなくだけど、ふたりで幸せになれる予感がする。その言葉がずっと喉辺りにいたけれど、私は飲み込んでお腹の辺りまでに引っ込ませた。

 とうとう別れる道に着いてしまった。着きたくなかった。ずっと永遠に一緒に歩いていたい。でも永遠なんてあるはずもなく。それは一生叶わぬ願い。

「またね」

「うん、またね。今日は大好きなコーンスープが飲めて、綺麗なダイヤモンドダストを見ることが出来て幸せだったな。ありがとう」

 彼の言葉は素直に嬉しかったけれど、私と再会出来た事に関しては一言もなくて、少し寂しかった。

 こっちはダイヤモンドダストを見れた事よりも、あなたと再会出来た事が、一緒に過ごせた事が何よりも嬉しかったのに。そして、心の中で薄くなってきていたあなたへの想いが、完全に復活してしまったというのに。

 本当に彼の心の中には、私は住んでいないのだなって事を実感した言葉でもあった。

 別れた後、私はさっきの世界の余韻に浸っていたくて、家に帰りたくなかったので遠回りする事にした。進む方向を変え、雪が積もりすぎて冬は誰も来ないような公園の中に入り、反対側の入口から出て、真っ直ぐ歩いていった。

“またね”

 彼と別れ際、その言葉を交わしたけれど、もう彼と会う事はなかった。
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