淡雪のように、消えていった。
*中学三年生の冬

 学校から家に帰る時、少しだけ遠回りして家の近くにある川へ行った。しょっちゅう寄り道してここに来ている。流れている水の周りは誰も近寄らないので雪が深く積もっている。だから少し離れた堤防の高いところから眺めていた。
 今日はよく見ると、誰か歩いた跡があった。それは川と並行に続いていた。
 
 私は流れる水の見つめる場所を決めて、それを目で追うのが好きだった。せわしなく目が左右に動く。
 
 後ろから話し声が聞こえた。振り向くと同じ学校の制服を着たカップルがこっちに向かって来ていた。

 嫌だなぁ……。

 その人達の顔を確認する事はせず、黒いコートのフードを被り、ベージュのチェック柄のマフラーで口元を隠し、彼らを横切り走って家に帰った。

 次の日学校で中野くん水野さんカップルの様子がいつもと違っていた。いつもみたいに休み時間一緒にいないし、帰りも別のタイミングで教室から出ていった。
 コソコソと聞こえてきた噂話によると、ふたりは昨日あの川の近くで、別れ話をしたらしかった。私がすれ違ったのは、あのふたりだった。

 お似合いで上手く行きそうなカップルもすぐに別れたりして、付き合うって大変なのかな。
 ふたりが別れたからって、私と彼が付き合う確率はゼロだけど、うきうきした気持ちになった。
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