淡雪のように、消えていった。
*高校一年生

 それから、中学を卒業し、彼と私は別の高校に進学した。
 彼への気持ちは薄れていく途中の道のりだった。まだその道を進み始めたばかりだから、彼はまだ心の中に濃い姿でいる。このままリアルで彼の姿を見なくてすむならば、私の心の中から消えていってくれるだろう。多分。

 私は、彼のおかげでほんの少しだけど、自然に笑えるようになっていた。そのおかげか、中学の時よりも人と話す事が怖くなくなった。相手はもしかしたら私の事を友達だとは思っていなくて、友達と呼んでも良いのか分からないけれど、そんな人がふたり出来た。「みっちゃん」と「なーちゃん」。あだ名で呼んでいる。私の事も「あやちゃん」って呼んでくれている。学校の休み時間に世間話をして、放課後もたまに寄り道してハンバーガーを食べに行き、話したりする。私は無理して友達を作らなくても良いという考えを持っていて、高校もひとりかなって思っていた。無理しないで自然に出来た友達。

私の心に大好きなタンポポのような黄色い花が一輪、ふわっと咲いた。


 中野翔くんは、ほろ苦い思い出の人で、私の笑顔の恩人。

で、終わるはずだった。
 
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