君は、幸せな人魚姫になった
「青井!」

帆高は大声で叫び、救急車を呼ぶためにスマホを手に取る。その間にみずきの意識は失い、帆高はこのままみずきを失ってしまうのではないかと恐怖で体を震わせた。

医師の迅速な対応により、みずきの発作は何とか抑えることができた。だが、病院に駆け付けたみずきの両親と帆高は、医師からあまりにも残酷なことを告げられる。

「今回は何とか発作を抑えることができましたが、次に発作が起きたら……最悪の覚悟をしておいてください」

医者の言葉が理解できず、帆高の目の前が真っ暗になる感覚がした。隣でみずきの母親が泣き叫ぶ声がする。フラフラとした足取りで帆高はみずきが眠っている病室に入り、みずきの手を握った。

「あったかい……それに、生きてる……!」

握ったみずきの手から、トクトクと規則正しい脈が伝わってくる。その脈を感じ取った帆高の瞳から涙が溢れる。

「せめて、俺が医者になってからの宣告だったら……!」

まだ医学生の自分にできることは何もない。あまりにも無力な自分に苛立ち、帆高は病室だというのに叫びたくなった。
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